AFP・宅建士として国内外の不動産に関わり続けてきた私、Christopherが、海外移住ポルトガル不動産シミュレーションとして実際に試算した7項目を公開します。フィリピンでプレセールを購入した経験を持つ私が、次のターゲットとして検討しているポルトガルについて、数字と法的背景を踏まえて整理しました。移住を考えている方の判断材料としてお読みください。
ポルトガル移住の前提条件整理|シミュレーションの出発点
なぜ「35歳移住計画」という枠組みで試算したのか
私は現在、東京都内で法人を経営しながらインバウンド民泊事業を運営しています。将来的にはアジア圏への移住を視野に入れていますが、ポルトガルは「欧州への足がかり」として候補に挙げている国のひとつです。
35歳という起点を設定した理由は明確で、キャリアの軸足を海外に移しながらも日本での資産基盤を維持できるギリギリのタイミングが、おそらくその前後だからです。40代以降になると日本の税務・社会保険との切り離しが複雑になります。宅建士として国内不動産の法務も扱ってきた経験から言うと、この「タイミングの設計」は投資判断と同じくらい重要です。
試算の前提条件として設定したのは以下の通りです。移住者ビザ(Dビザ)の取得を前提とし、ゴールデンビザ制度(現行では不動産直接投資によるルートは2023年10月以降原則終了)は利用しない想定です。ポルトガルの滞在許可を得ながら不動産を保有するシナリオで計算しています。
ゴールデンビザの現状と移住ビザの実際
ポルトガルのゴールデンビザは、2023年10月の法改正によって不動産購入を通じた取得ルートが原則廃止されました。現在は投資ファンドへの出資やジョブクリエーション要件が中心です。この変化は日本人投資家にとって大きな制度転換で、「リスボン不動産を買えばビザが取れる」という前提はすでに崩れています。
一方、Dビザ(パッシブインカムビザやデジタルノマドビザ)は月収要件を満たせば取得できる可能性があります。2024年時点でのパッシブインカムビザの月収要件はポルトガル最低賃金の4倍程度(おおよそ3,040ユーロ以上/月)が目安とされています。ただし入国管理局の審査基準は随時変更されるため、申請前に現地の移民法専門家への相談を強く推奨します。
フィリピン購入経験を活かした試算設計|私の実体験から
フィリピン・プレセール購入時に痛感した「諸費用の見落とし」
私がフィリピン・オルティガス(マニラ新興エリア)のプレセールコンドミニアムを購入した時の話から始めます。購入価格はUSD換算でおよそ10万ドル台後半でしたが、最終的に支払った総額は当初の想定より15〜18%ほど多くなりました。
理由のひとつは、Transfer Tax(移転税)とDST(印紙税)の計算を甘く見ていたことです。フィリピンでは物件価格の合計に対して複数の税が上乗せされる構造で、日本の不動産取引とは費用の積み上げ方が異なります。この経験があったため、ポルトガルのシミュレーションでは「購入価格+諸費用」を最初から別項目で試算することにしました。
なお、海外不動産は日本の宅建業法の適用外です。私は宅建士として国内取引に携わってきましたが、海外物件の購入支援においては宅建業法上の仲介行為には当たりません。現地の資格を持つエージェントと弁護士の関与が不可欠であることを、最初に明記しておきます。
保険代理店時代の富裕層相談が教えてくれた「税コストの軽視」
総合保険代理店に在籍していた3年間、個人事業主や資産1億円超の富裕層の相談を多数担当しました。その中で繰り返し目にしたのが、「表面利回りだけで海外不動産を買ってしまった」という後悔です。
具体的には、ある相談者がリゾート系海外物件を購入した際、現地の固定資産税相当・管理費・日本での確定申告コスト・送金手数料などを合計すると、手元に残る収益がほぼゼロになっていたケースがありました。ポルトガルのシミュレーションでは、この教訓から「税後・費用後ネット利回り」を試算の中心に据えています。
物件価格・諸費用・利回りの3項目試算
リスボン近郊の物件価格帯と購入諸費用の内訳
2024年のリスボン不動産市場では、リスボン市内の1LDK相当(T1〜T2)で35万〜60万ユーロが中心価格帯です。私が試算のベースとしたのは、リスボン郊外(カスカイス方面)のT2・45万ユーロ(約7,200万円、1ユーロ=160円換算)の物件です。
購入諸費用として見込む必要があるのは以下の通りです。IMT(不動産移転税)は物件価格・用途によって税率が異なり、居住用であれば50万ユーロ以下は最大約8%のレンジ内で累進課税されます。印紙税(IS)は0.8%、公証人・登記費用が約1〜1.5%、エージェント手数料が3〜5%(VAT別)です。これらを合算すると、45万ユーロの物件では諸費用だけで約5〜6万ユーロ(約800〜960万円)になります。諸費用込みの取得総額は51万ユーロ程度を想定しています。
想定利回りと空室リスク:表面と実質の差
リスボン近郊の長期賃貸では、T2クラスの月額賃料は1,500〜2,200ユーロが相場です。45万ユーロの物件で月額1,800ユーロを想定すると、年間賃料収入は21,600ユーロ。表面利回りは約4.8%になります。
ただしここから、管理費・コンドミニアム費(Condomínio)年間約1,200ユーロ、固定資産税相当(IMI)年間約900〜1,350ユーロ、空室率10%(年間1.2ヶ月分)を差し引きます。さらに現地管理会社への委託費が賃料の8〜10%、日本での確定申告費用も加味すると、実質利回りは2.5〜3.2%程度まで下がります。海外不動産利回りを語る際、表面と実質の差は1.5〜2ポイント以上生じるケースが多い点は、必ず頭に入れておく必要があります。
税金・維持費・為替の3項目試算|数字で見る年間コスト
ポルトガルの海外不動産税金:NHR制度とIMIの構造
ポルトガルには「NHR(非通常居住者)制度」があり、一定条件を満たすと海外源泉所得に対して10年間の優遇税率が適用される制度でした。ただし2024年の税制改正でNHRは廃止され、後継制度「IFICI(旧NHR2.0)」が2024年以降の新規申請者に適用されています。制度の詳細は変動しているため、現地税理士への確認が不可欠です。
一方、毎年かかるIMI(固定資産税相当)は、都市部の居住用物件では評価額の0.3〜0.45%が目安です。45万ユーロの物件であれば年間1,350〜2,025ユーロ程度を見込みます。加えて、日本居住者がポルトガル不動産から賃料収入を得る場合、日本の確定申告で外国税額控除の適用可否を検討する必要があり、日ポルトガル租税条約の内容と実務については日本の税理士への相談が欠かせません。アブダビ不動産投資の実体験|宅建士が5つの判断軸で検証した2027年版
為替変動が収支に与える影響:ユーロ/円のボラティリティ試算
ユーロ/円は過去10年で110円台から170円台まで60円近い変動幅があります。私の試算では3シナリオを設定しました。①ユーロ高シナリオ(1ユーロ=170円)、②中立シナリオ(160円)、③ユーロ安シナリオ(130円)です。
年間賃料収入21,600ユーロを円換算すると、①が約367万円、②が約346万円、③が約281万円です。シナリオ間で年間86万円の差が生じます。10年保有で換算すると860万円もの差になる計算で、為替リスクはコスト項目として必ず数値化しておくべきです。なお、為替ヘッジを個人レベルで完全にかけることは現実的ではなく、「ユーロ建ての支出もユーロで賄う設計にする」という自然ヘッジの発想が現地在住者には合理的です。売掛金 早期回収 方法7選|AFP宅建士が500人相談で導いた実例
7項目を踏まえた判断軸|まとめとCTA
シミュレーション7項目の整理と判断のポイント
- ①物件取得価格:45万ユーロを基準に設定。市場価格は2024年も上昇傾向にあり、エリア選定が収益性に直結する。
- ②購入諸費用:IMT・印紙税・登記・エージェント費用を合算すると取得総額の11〜13%。「諸費用込み予算」で設計すること。
- ③表面利回り:リスボン近郊T2クラスで約4〜5%。立地・物件スペックによって大きく異なる。
- ④実質利回り:管理費・IMI・空室損・委託費を差し引くと2.5〜3.2%程度まで低下する可能性がある。
- ⑤海外不動産税金(現地):IMIは毎年発生、IFICI等の優遇制度は申請タイミングと条件確認が必須。
- ⑥日本での税務処理:外国税額控除・日ポルトガル租税条約・確定申告対応。日本の税理士との連携が不可欠。
- ⑦為替リスク:ユーロ/円の変動幅は過去10年で60円超。10年スパンで見ると収支への影響が特に大きい。
「試算して終わり」にしないための次の一手
シミュレーションはあくまで判断材料のひとつです。私自身、フィリピンのプレセール購入時もハワイのタイムシェア運用時も、机上の数字と実態には必ずギャップがありました。特に海外不動産は、現地の法律・税制・管理慣行が日本とは根本的に異なります。
ポルトガル移住を本格的に検討するなら、まず「日本国内の既存資産・不動産の整理」から始めることを私は勧めています。日本の物件を適正に評価・整理してから海外へ資金を移す流れが、資産全体のバランス上も合理的です。国内不動産のトラブルや査定に不安がある方は、公平な立場で相談に乗ってくれる機関を活用することが、第一歩として有効です。個人差はありますが、準備段階での専門家相談が後のトラブルを大幅に減らすケースを私は何度も見てきました。
なお本記事の数字はあくまで試算であり、投資を推奨するものではありません。実際の購入・移住にあたっては、現地の不動産エージェント・弁護士・税理士、および日本の税理士・ファイナンシャルプランナーへの相談を必ず行ってください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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