海外不動産 減価償却 規制の影響実例|宅建士が3物件で検証

海外不動産の減価償却を活用した節税スキームに、2020年税制改正が実質的な終止符を打ちました。私はAFP・宅地建物取引士として海外不動産の規制・影響・実例を追い続けており、フィリピンのプレセールコンドミニアムとハワイのタイムシェア物件を自ら所有しています。本記事では3物件のシミュレーションを通じて、改正の実態と今後の出口戦略を実務視点で整理します。

2020年税制改正の全体像と海外不動産 減価償却 規制の影響実例

改正前の「節税スキーム」はなぜ成立していたのか

2020年以前、富裕層の間で定番だった手法があります。海外の中古木造建築物を購入し、日本の税法上の耐用年数計算式(法定耐用年数 × 20%)で算出した短い償却期間に大きな減価償却費を計上する、いわゆる「築古木造節税」です。たとえば築22年超の木造物件なら耐用年数はわずか4年となり、購入価格の大部分を4年間で費用計上できました。

この損益通算によって、給与所得や事業所得と相殺できるため、課税所得を大幅に圧縮できました。私が総合保険代理店に在籍していた頃、富裕層の資産相談の場でこのスキームを検討されているお客様を複数担当しました。当時は合法的な節税手段として一定の評価があったのも事実です。

2020年改正が封じた「損益通算」の具体的な仕組み

令和2年度(2020年)税制改正では、国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例が新設されました。改正の核心は「国外中古建物から生じた不動産所得の損失のうち、国外中古建物の償却費に相当する部分は、損益通算に用いることができない」という規定です(所得税法第41条の4の2)。

つまり、仮に海外物件で年間300万円の減価償却費を計上して不動産所得がマイナス250万円になったとしても、その250万円を給与所得から差し引くことは原則できなくなりました。改正の適用は2021年分の所得税から。改正前に物件を取得済みだった投資家にも一律に適用されるため、既存オーナーへの打撃は少なくありませんでした。

私の3物件で見た影響実例と資産戦略の変化

フィリピン・オルティガスのプレセールコンドミニアム購入時の判断軸

私がフィリピンのマニラ新興エリア・オルティガスでプレセールコンドミニアムの購入を決めたのは、減価償却節税を主目的にしたわけではありませんでした。物件価格は日本円換算で約1,500万円台、フィリピンペソ建てでの分割払い契約です。プレセール段階でのキャピタルゲイン期待と、東南アジアの人口動態に基づく賃料収入の中長期的な成長可能性が判断の根拠でした。

新築コンドミニアムのため、日本の税法上で問題になる「中古建物の過大償却」には該当しません。ただし注意点として、フィリピン不動産の取得・売却にはキャピタルゲイン税(売却価格の6%)や印紙税・移転税が現地で課され、日本での確定申告とは別枠で税務処理が必要です。現地税務と日本側の税務申告は必ず各専門家への相談をお勧めします。為替リスクも実感しており、ペソ円レートの変動で実質利回りに影響が出る点は常に意識しています。

ハワイのタイムシェア物件とドバイ検討時に感じた制度格差

私はハワイの主要リゾートエリアでマリオット系タイムシェアを所有しています。タイムシェアは厳密には不動産の「所有権」と「利用権」が混在する商品であり、通常の投資用不動産とは税務上の扱いが異なります。日本の税法では個人が保有するタイムシェアの費用を減価償却費として損益通算に使うことは、実務上かなり難しい。この点を事前に把握していたため、私はタイムシェアをあくまで「利用・体験型の資産」として位置づけています。

一方、私が検討段階で調査したドバイ(UAE)の不動産は、現地に法人税・個人所得税がなく(2023年以降の法人税導入に注意は要しますが)、日本居住者が現地物件を賃貸に出した場合の課税は日本国内で完結します。2020年改正の「国外中古建物」規制は当然ドバイ物件にも適用されるため、節税目的での中古物件取得は制度的に意味をなさなくなっています。この3物件を比較すると、改正後の海外不動産は「節税ツール」から「実質利回りと為替・カントリーリスクを直接評価する投資対象」へと位置づけが変わったことが、改めてよく分かります。

個人と法人で異なる扱い:海外不動産 法人活用の現在地

「法人スキーム」に移行すれば解決するのか

2020年改正が個人の損益通算を封じたため、「法人で海外不動産を取得すれば節税できる」という話が広まりました。確かに法人税法上は今のところ同種の規制が設けられておらず、法人が国外中古建物から生じた損失を他の所得と通算することは現行制度では可能です。ただし、これを「法人なら無制限に節税できる」と解釈するのは危険です。売掛金 早期回収 方法7選|AFP宅建士が500人相談で導いた実例

国税庁は法人を使った租税回避スキームに対し「経済的実質」の観点から否認する事例を積み重ねており、今後の税制改正で法人への規制が強化される可能性も十分に考えられます。私自身、都内で法人を経営しインバウンド民泊事業を運営していますが、法人での海外不動産取得については税理士と慎重に協議しており、現時点で「節税が主目的」の取得は選択肢から外しています。

法人活用で見落とされやすい3つのコスト

法人スキームを検討する際、節税効果だけに目が行きがちですが、コスト構造を正確に把握することが不可欠です。まず①法人維持コストとして、決算申告費用・法人住民税均等割(最低年7万円)が固定費として発生します。次に②現地法人と日本法人の二重課税リスク。フィリピンやタイなど一部の国では外国法人名義での土地取得に法的制限があり、信託スキームや現地合弁法人を介する場合の課税関係は複雑です。

さらに③出口(売却)時の課税も重要です。法人が国外不動産を売却した場合の譲渡益は法人税の課税対象となり、その後個人に配当として渡す段階でさらに所得税が課されます。個人保有で売却した場合の分離課税(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税)と比較したコストシミュレーションは、購入前に必ず行うべきです。

築古木造スキーム崩壊の教訓と2026年以降の出口戦略

スキーム依存で物件を持った投資家の現実

改正前に節税目的で米国・ハワイ・フィリピン等の築古木造物件を取得した投資家の中には、現在「出口が見えない」状態に陥っているケースがあります。減価償却期間が終了すると費用計上できなくなり、賃料収入がそのまま課税所得に加わります。しかも現地では物件が老朽化していて修繕コストが増加し、賃料収入だけでは採算が取れないケースも少なくありません。

私が保険代理店時代に相談を受けた富裕層のお客様の中にも、「減価償却が終わったが売却しても損が出る」という悩みを打ち明けられた方がいました。購入時のキャピタルゲイン期待が為替下落や現地市況の停滞で実現せず、節税期間中の税効果とトータルで比較すると「プラスマイナスゼロに近い」という結論になったケースもあります。これは築古木造節税スキームへの依存が生んだ典型的な失敗パターンです。海外移住オーストラリア不動産賃貸比較|宅建士が検証した5判断軸

実質利回りで評価する2026年以降の7論点

2026年以降、海外不動産を保有・取得する際に私が実務的に重視する論点を整理します。

  • ①実質利回りの再計算:節税効果を除いたグロス利回りとネット利回り(管理費・固定資産税・修繕積立等控除後)を現地通貨ベースで試算する
  • ②為替ヘッジコスト:フィリピンペソ・米ドル・UAE ディルハムなど通貨ごとのヘッジ手段と費用を把握する(為替リスクは必ず存在します)
  • ③カントリーリスクの定量評価:外資規制・送金規制・政権交代リスクを国別に整理する
  • ④現地税務と日本税務の二重申告体制:外国税額控除の活用可否を税理士と事前確認する
  • ⑤売却時の出口市場の流動性:特にプレセール物件は竣工後の二次市場の厚みを事前調査する
  • ⑥法人化の損益分岐点:法人維持コストと節税効果のネット比較を5年・10年スパンで行う
  • ⑦日本の税制改正動向の継続モニタリング:法人版規制の導入可能性に備え、毎年度の税制改正大綱を必ず確認する

いずれの論点も個人差・物件差があり、判断には税理士・FP・現地専門家への相談が不可欠です。

まとめ:規制後の海外不動産とトラブルを避ける出口戦略

2020年改正が示した「本質的な価値」への回帰

  • 海外不動産の減価償却規制(2020年税制改正)は、個人の国外中古建物による損益通算を実質的に封鎖した
  • 法人スキームに移行しても万全ではなく、今後の税制改正リスクと法人コストを含めた総合評価が必要
  • 築古木造節税スキームへの依存は、減価償却終了後に採算悪化・出口難という二重の問題を生む可能性がある
  • フィリピン・ハワイ・ドバイなど地域を問わず、改正後は「実質利回り・流動性・為替・現地法律」の4軸で物件を評価する姿勢が求められる
  • 海外送金・現地税務・日本での確定申告は必ず専門家と連携して行うことを強く推奨します

不動産トラブルや査定に迷ったら公平な第三者機関へ

海外不動産に限らず、国内不動産も含めて「購入後に思わぬトラブルが発生した」「売却価格の妥当性が分からない」というご相談は少なくありません。宅建士として私が日頃から感じるのは、利害関係のある業者だけに相談することのリスクです。一般社団法人が提供する公平な不動産査定・相談窓口を活用することで、第三者の視点から客観的なアドバイスを得られる可能性があります。

特に2020年改正後は「節税目的で取得した物件をどうするか」という出口相談が増えています。売却・保有継続・法人への移転など、選択肢ごとの税務・法務リスクを整理するうえでも、公平な立場の専門機関への相談は検討する価値があります。

【一般社団法人が提供する公平な不動産査定】トラブル解決協会

筆者:Christopher/AFP・宅地建物取引士。フィリピン・ハワイで実物不動産を所有し、現役の宅建士として国内外の不動産・資産形成を実務視点で解説。大手生命保険会社2年、総合保険代理店3年を経て、現在は都内法人を経営・インバウンド民泊事業を運営中。

【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。

【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆

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