セブ オフィス需要推移7年実録|宅建士が現地視察で精査した賃料動向2026

フィリピン・セブのオフィス需要推移は、2017年から2024年にかけて劇的な変化を遂げました。私はAFP・宅建士として、マニラ圏の新興エリアにプレセールコンドミニアムを保有しながら、セブ市場を4回の現地視察と7年分の市場データで継続追跡してきました。BPO産業の構造変化、コロナ後の空室率上昇、そして2026年以降の商業不動産としての再評価——この記事で、実務者の視点から率直にまとめます。

セブのオフィス市場7年推移:2017年から2024年の軌跡

BPOブームが生んだ急速な供給拡大期(2017〜2019年)

2017年当時、セブのオフィス賃料は1平方メートルあたり月額700〜900ペソ程度が相場で、マニラのBGCやマカティと比較して30〜40%低い水準でした。この価格差がBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)企業の地方分散を後押しし、IT Park周辺とSRP(南部沿岸道路)エリアを中心に大型オフィスビルの竣工ラッシュが続きました。

私がセブに初めて足を運んだのも2018年のことです。IT Parkのグレード A ビルを見て回ると、コールセンターや医療転写、ソフトウェア開発の会社が廊下を埋め尽くすように入居しており、空室率は5〜7%台と極めて低水準でした。あの熱量は今でも記憶に残っています。

しかしこの時期に問題の種もまかれていました。需要の旺盛さに引き寄せられた開発業者が、2020〜2022年竣工を目標に大量のオフィス床を計画したのです。供給過剰の予兆は、当時すでに一部のアナリストが指摘していました。

コロナ禍と在宅勤務移行による需要急変(2020〜2022年)

2020年3月のロックダウンは、フィリピン商業不動産市場に深刻な打撃を与えました。BPO業界は比較的早く在宅勤務体制に移行できた反面、それが「オフィスが不要かもしれない」という意識変化を社内に定着させる契機にもなりました。

セブのオフィス空室率は2020年末に10%を突破し、2021年には一部エリアで15%超に達したと複数のフィリピン不動産調査会社が報告しています。この数字は、単なる一時的な停滞ではなく構造的な変化の始まりを示していました。賃料も下落圧力を受け、2019年ピーク比で10〜20%程度の調整が見られたエリアも存在しました。

特に2021年に現地を訪れた際、IT Parkの一部ビルで「空きフロアあり」の張り紙を目にしたときは率直に驚きました。2018年の盛況ぶりとのギャップが大きすぎて、自分の目を疑ったほどです。

現地視察4回で見た需要の実態:私の体験と現場観察

オルティガス保有者として学んだ「供給サイクルの恐さ」

私はマニラ圏の新興エリアにプレセールコンドミニアムを保有しています。購入を決めた当時、私が最も重視したのは「オフィス需要との連動性」でした。居住用コンドミニアムであっても、周辺のオフィス市場が活況であれば外国人テナントや単身BPO社員の賃貸需要が支えになると判断したからです。

この経験があったからこそ、セブのオフィス市場を見るときに「現在の賃料水準」だけでなく「供給パイプラインの厚み」を必ず確認するクセがつきました。宅建士として日本の不動産実務を経験している私からすると、供給サイクルの読み違いが空室率と賃料の両方を同時に悪化させるのは国を問わない法則です。セブはまさにその典型例を2020年代前半に体験しています。

2022年の現地訪問では、地元の不動産エージェントに直接ヒアリングを行いました。「IT Parkの空室率は改善途上だが、SRPエリアは竣工済み床の消化に時間がかかっている」という証言を複数から得ています。エリアによって回復速度に明確な差があることを、この時点ではっきり認識しました。

保険代理店時代の富裕層相談から学んだ「見えないリスク」の見方

総合保険代理店で3年間、個人事業主や富裕層の資産相談を担当していた経験が、海外不動産の現地調査でも役立っています。当時、フィリピン不動産への投資を検討していたお客様から相談を受けた際、私が最初に確認したのは「出口戦略」と「為替リスクの許容度」でした。

商業不動産、特にオフィスセクターの投資においては、テナント属性と契約期間の安定性が居住用と異なる重みを持ちます。BPOテナントの場合、企業の経営方針転換や本社側の意思決定一つで撤退が決まるリスクがあります。実際、2022〜2023年にかけてセブから複数の外資系BPO企業が一部機能を他国に移管したり、在宅勤務を恒久化したりするケースが報告されています。これは「BPO撤退」というキーワードで日本語メディアでも取り上げられ始めた現象です。

海外不動産は日本の宅建業法の適用外ですが、リスク開示の重要性は国内不動産と変わらないどころか、むしろ高いと私は考えています。為替リスク、現地の法規制変更リスク、そして今回のようなテナント産業そのものの構造変化リスク——これらを複合的に評価することが、フィリピン商業不動産で失敗を避けるための基本です。

主要エリア別セブ オフィス賃料動向比較(2024年時点)

IT ParkとSRPの格差が鮮明になった2023〜2024年

2024年現在、セブのオフィス賃料は大きくエリアで二分されています。IT Parkを中心としたグレードAビル群では、賃料が1平方メートルあたり月額800〜950ペソ程度まで回復傾向にある一方、SRPエリアや市街地の古いビルでは600ペソ台にとどまるケースも少なくありません。

2023年に実施した4回目の現地視察では、IT ParkのあるビルでBPO企業の新規入居交渉が進んでいる現場を間近で確認しました。フィリピン国内向けのコールセンターや、比較的規模の小さいITサービス企業が、大手BPOが空けたフロアを分割取得するケースが増えているという印象です。

空室率の推移を見ると、IT Parkエリアは2022年のピークから改善が進み、2024年時点で10〜12%程度まで低下しているとみられます。ただしSRPエリアでは依然として15%前後で推移しており、回復に差があります。セブ不動産プレセール購入術|宅建士が5判断軸で実践

マクロ指標としてのフィリピン商業不動産全体の位置づけ

セブのオフィス市場を語るうえで、フィリピン商業不動産全体のトレンドを外すことはできません。マニラ首都圏(BGC・マカティ・オルティガス)もポストコロナの調整局面を経て、2023年後半から2024年にかけて需要が底打ちし、新規テナント獲得競争が激化しています。

セブはこのマニラとの競争にさらされながらも、「コスト優位性」と「生活の質の高さ」という二つの独自の強みを持ち続けています。特に欧米系の中規模IT企業やスタートアップが、マニラ以外のフィリピン拠点としてセブを選ぶ動きは、2023〜2024年も一定程度続いています。セブ不動産投資の文脈でオフィス市場を評価するなら、この「マニラとの補完関係」を念頭に置くことが重要です。

BPO産業の構造変化と空室率:2025〜2026年の変数

AIと自動化がBPO需要に与える中長期的影響

フィリピンのBPO産業は2023年時点で約170万人を雇用し、GDP寄与度も高い基幹産業です。しかし生成AI・自動化技術の普及は、コールセンター業務やデータ入力といった従来型BPO業務の一部を代替しつつあります。これはセブのオフィス需要にとって無視できない中長期リスクです。

ただし現実は単純ではありません。AIを活用した高付加価値業務(プロンプトエンジニアリング、AIトレーニングデータ作成、複雑な顧客対応など)については、英語力と人件費コストの両面でフィリピンが優位性を持つ可能性があります。つまりBPOの「量」は減少しても「質」の転換によってオフィス需要が一定水準を維持するシナリオも考えられます。投資判断においては、この両面を冷静に評価することが求められます。

IGAとPOGOアフターの影響:オフィス床の再配分

2024年にフィリピン政府がPOGO(フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレーター)を原則禁止したことは、マニラだけでなくセブのオフィス市場にも影響を与えています。POGOが占有していた大型オフィスフロアが市場に放出され、短期的には空室率を押し上げる要因になっています。

一方、フィリピン政府はPOGO撤退後の代替産業としてIGAM(情報技術・ゲーミング・アミューズメント)やBPO強化策を打ち出しています。これが実効性を持つかどうかは2025〜2026年の動向を注視する必要があります。セブ不動産投資を検討する場合、POGO撤退による直接的な空室増加エリアを把握したうえで、BPO・IT向け優良物件との明確な区別が求められます。セブ プレセール デベロッパー選定|宅建士が現地視察3社で得た教訓

2026年以降の投資判断軸5つ:まとめとCTA

宅建士・AFP視点で整理したチェックポイント

  • ①エリア選別の徹底:IT Parkなどグレードの高い立地に絞り、SRPや市街地の老朽ビルとのリスク差を明確に認識すること。空室率・賃料水準ともにエリア格差が拡大傾向にあります。
  • ②テナント産業の構造変化を織り込む:BPO撤退や業務自動化の影響を単年度ではなく5〜10年スパンで評価する。高付加価値BPOやIT企業向けのグレードAビルに需要が集中する傾向が今後も強まると考えられます。
  • ③為替リスクの定量的把握:フィリピンペソと円の為替変動は投資収益に直接影響します。過去10年でペソ/円レートは大きく変動しており、円換算の収益試算は複数シナリオで行うことを強く勧めます。
  • ④現地法規制・税務の事前確認:外国人のオフィス用コンドミニアム所有に関するフィリピン法(コンドミニアム法・外国人土地所有規制)は日本の宅建業法とは全く異なる体系です。税務も日本とフィリピン双方の課税ルールが絡むため、両国の専門家への相談が不可欠です。
  • ⑤出口戦略の明確化:プレセール段階から転売・賃貸・長期保有の各シナリオを試算し、PEZA認定エリアかどうか、外国人への転売制限の有無を確認することが、損失リスクを低減するための基本です。

セブ不動産投資を検討する前に「相談」を活用してほしい理由

私がオルティガスのプレセールを購入するまでに、現地エージェント・日系エージェント・フィリピン在住の税理士に複数回相談しました。それでも購入後に「確認しておけばよかった」と感じた点は少なからずあります。海外不動産は日本の宅建業法の保護の外にあり、重要事項説明や手付金保全のような日本特有の保護制度がほぼ機能しない市場です。

特にセブのオフィス向け物件や複合用途の商業不動産は、居住用コンドミニアムとは異なる法的・税務的論点が多く存在します。フィリピン商業不動産への投資を検討しているなら、購入前の段階で専門家への相談を経ることが、失敗を避けるうえで最も費用対効果の高い行動だと断言できます。個人差はありますが、事前相談一つで回避できるトラブルが非常に多いのがこの市場の特性です。

セブのオフィス需要推移を7年分追いかけてきた私が言えることは、「市場を知ること」と「自分のリスク許容度を知ること」の両方が揃って初めて投資判断が成立するということです。まず相談という選択肢を積極的に使ってください。

フィリピン不動産プレセール投資の事前相談

筆者:Christopher/AFP(日本FP協会認定)・宅地建物取引士。フィリピン・マニラ圏の新興エリアにプレセールコンドミニアム、ハワイの主要リゾートエリアにタイムシェアを所有。大手生命保険会社2年・総合保険代理店3年を経て、個人事業主・富裕層の資産相談を多数担当。現在は東京都内で法人を経営し、インバウンド民泊事業を運営。株式・ETF・米国REIT・暗号資産・銀地金を運用中。宅建士兼AFPとして、海外資産形成と日本国内の税務・法務の両面を実務視点で発信しています。

【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。

【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆

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