AFP・宅建士として海外不動産に実際に関わってきた経験から言うと、ベトナム不動産投資の外国人規制は「思っていたより複雑で、思っていたより厳しい」の一言に尽きます。ホーチミンのコンドミニアムに関心を持つ日本人投資家が増えている一方、所有権の上限年数・物件総数の制限・送金規制という3つの壁を正確に理解しないまま契約に進んでしまうケースを何度も目にしてきました。この記事では、海外不動産 規制の実務を知る立場から、7つの制限を体系的に整理します。
ベトナム外国人規制の全体像:7つの制限を俯瞰する
2015年住宅法改正が変えた「外国人オーナー」の定義
ベトナムでは2015年の住宅法(Law on Housing No. 65/2014/QH13)改正によって、外国人および外資系企業が住宅用不動産を所有できるようになりました。それ以前は原則として認められていなかったため、この改正は大きな転換点です。ただし「所有できる」という言葉には、7つの条件が付いています。
具体的には、①所有期間の上限、②1棟あたりの外国人保有比率、③エリア制限、④取得手続きの制約、⑤売却・賃貸の制限、⑥ベトナム 送金規制との連動、⑦更新手続きの不確実性——この7点が外国人投資家に課された制限の全体像です。それぞれが単独ではなく複合的に絡み合うため、一点だけ調べて「問題ない」と判断するのは危険です。
日本の不動産法制との根本的な違いを理解する
私は宅建士として国内の取引実務にも携わっていますが、日本の不動産制度と比較した時、ベトナムの制度には構造的に異なる部分があります。日本では「所有権」は原則として半永久的に継続しますが、ベトナムでは土地は国家が所有し、個人・法人が持てるのは「使用権(Land Use Right)」に過ぎません。
外国人が購入するコンドミニアムの場合、この使用権が50年(住宅用は外国人に対して最長50年)と設定されており、現行法上は最長50年の土地使用権と紐付いた形で住宅所有権が認められます。ただし実務上は「30年」という数字が多く流通しているため、次のセクションで詳細を整理します。なお、日本の宅建業法はベトナム不動産には直接適用されませんが、私自身が宅建士の視点で制度を分析することは有益だと考えています。
所有期間30年の制約と更新:私がフィリピン購入時に学んだ教訓
「30年」と「50年」が混在する理由と更新リスク
私がフィリピン・オルティガスでプレセールのコンドミニアムを契約した際、最初に徹底的に調べたのが「所有権の継続性」でした。フィリピンでは外国人はコンドミニアム全体の40%までを区分所有できる制度があり、所有権自体は半永久的に継続します。この経験があったからこそ、ベトナムの「期限付き所有権」に強い関心を持つようになりました。
ベトナムの住宅法では、外国人の住宅所有期間は「50年」と定められています。ところが現場では「30年」という情報が広まっており、これは一部のデベロッパーがプロジェクト単位で設定した契約条件や、旧法時代の規定が混同されているためです。重要なのは、50年の期限が来た後の更新が「申請すれば認められる」と法律に書かれているものの、その具体的な手続きと条件は2026年時点でも行政の裁量に大きく依存している点です。
更新が認められなかった場合に補償が保証されているかどうかは、現行法では明確ではありません。この不確実性を「リスク」として必ず計上してください。
プレセール購入で所有権登録が遅延するケースの実態
フィリピンでプレセールを購入した際、私は完成後の所有権証書(コンドミニアム証書)の発行に予想より時間がかかった経験をしています。ベトナムの場合、外国人向けのいわゆる「ピンクブック(住宅所有権証書)」の取得は、制度上は可能ですが実務上は遅延や手続き上の不備が起きやすいと複数の現地専門家から聞いています。
所有権証書が未取得の状態では、売却も担保設定も難しくなります。プレセールで物件を購入し、完成後の登記が遅延し、その間に政策が変わる——このシナリオを「ありえない話」と切り捨てるのは早計です。私は保険代理店時代に富裕層の資産相談を多数担当してきましたが、海外不動産で損失を抱えたケースの多くは「書面上は問題なかった」という共通点を持っていました。
物件総数30%上限と送金規制:出口戦略を縛る2つの壁
1棟あたり外国人保有30%上限が生む流動性リスク
ベトナムの住宅法では、1棟のコンドミニアムにおける外国人の所有比率は総戸数の30%以内に制限されています。一見、十分な余裕があるように感じられますが、これには深刻な副作用があります。
人気エリアのホーチミン コンドミニアムでは、外国人枠が早期に埋まるプロジェクトも存在します。その結果、外国人投資家同士での売買は「外国人枠が既に満杯の場合、次の外国人バイヤーに売れない」という問題が発生します。外国人から外国人へ売却するには、売り手が退出することで枠が空く必要があるわけです。この「外国人購入制限」は入口だけでなく出口にも影響し、ベトナム不動産 所有権の流動性を構造的に制限します。アブダビ不動産投資の実体験|宅建士が5つの判断軸で検証した2027年版
ベトナム送金規制と利益送金の実務コスト
ベトナム 送金規制は、不動産投資における収益の回収コストと直結します。外国人がベトナム国内の不動産を売却して得た資金を日本へ送金する場合、原則として外国投資法および外貨管理規制に基づく手続きが必要です。
具体的には、投資証明書や所得税の納税証明、銀行への申請書類など、複数の書類を揃えた上で認可された銀行を通じて送金する手順が求められます。この手続きが完了するまでの期間は数週間から数ヶ月に及ぶこともあり、その間は資金が国内に滞留します。また、ベトナムドン(VND)建ての収益を日本円に換える際には為替リスクも発生します。VNDは主要通貨の中でも変動リスクが高い通貨であり、円建てでの実質収益は為替次第で大きく変わります。為替リスクへの対処方法については、必ず外国為替の専門家にも相談することを推奨します。
名義スキームの落とし穴と宅建士が見た失敗パターン
ベトナム人名義・現地法人スキームの法的リスク
外国人購入制限を回避するため、ベトナム人配偶者や現地のビジネスパートナーの名義を使って不動産を取得するスキームが一部で流通しています。私はこのスキームを「検討する価値がある手段」とは考えていません。理由は明確で、リスクが収益を上回る可能性が高いからです。
ベトナム法上、名義人が法律上の所有者です。名義人との関係が悪化した場合、財産権の主張は極めて困難になります。また、このようなスキームはベトナムの法令に抵触する可能性があり、契約自体が無効とされるリスクも排除できません。海外不動産 規制の抜け穴を突こうとするほど、法的保護を失うという逆説的な状況が生まれます。
現地法人設立による商業用不動産取得の現実
住宅用ではなく商業用不動産を現地法人名義で取得するスキームも存在します。こちらは住宅法の外国人規制対象外となる場合がありますが、外国投資法(Law on Investment)に基づく投資ライセンスの取得、法人税・付加価値税の申告義務、清算時の資金送金規制など、別の複雑なコストが発生します。
私がハワイのタイムシェアを所有・運用する際にも、アメリカの税務申告(FIRPTA等)との兼ね合いで現地の税理士を活用しました。ベトナムの場合はさらに制度の透明性が低いため、現地の弁護士・会計士への報酬コストも事前に計算に入れることが不可欠です。なお、海外不動産に関する税務は国によって大きく異なりますので、日本の税理士と現地専門家の両方への相談を強く推奨します。売掛金 早期回収 方法7選|AFP宅建士が500人相談で導いた実例
宅建士の判断軸:ベトナム不動産投資を検討する前に整理すべきこと
7つの制限を踏まえた投資検討のチェックポイント
- 所有期間と更新リスク:50年の所有期間満了後の更新が行政裁量に依存している点を、シナリオとして複数想定しているか
- 外国人枠の残存数:購入対象物件の外国人保有比率が30%上限に対してどの程度余裕があるか、また売却時の外国人バイヤー需要を客観的に試算しているか
- ベトナム送金規制の手続き:売却益・賃料収入の本国送金に必要な書類・期間・コストを事前に確認しているか
- 為替リスクの定量化:VND/JPYの過去10年の変動幅を確認し、円建てでの最悪シナリオを試算しているか
- 名義スキームの排除:ベトナム人名義や法的グレーゾーンのスキームに頼らず、正規の手続きで取得できる物件か
- ピンクブック(所有権証書)の取得確認:プレセールの場合、完成後の証書発行スケジュールと遅延時の契約上の対応を確認しているか
- 日本側の税務申告:海外不動産から得た収益は日本の確定申告で申告義務があることを理解し、税理士に相談済みか
私が今、ベトナム不動産についてどう考えているか
私はフィリピン・オルティガスのプレセールコンドミニアムとハワイのタイムシェアを保有していますが、現時点でベトナム不動産は自分のポートフォリオに加えていません。理由は「制度の透明性と更新リスクが、現段階では私の許容リスク水準を超えている」と判断しているからです。これは個人的な判断であり、あなたのリスク許容度・投資目的・資産規模によって結論は異なります。
ただし、一つ言えるのは「制度を正確に理解した上で検討することと、制度を知らずに感覚で購入することは、結果が大きく変わる」という点です。AFP・宅建士として資産相談に関わってきた経験から、海外不動産で後悔する人の共通点は「リスクを把握せずに期待だけで動いた」ことでした。特にベトナム不動産 所有権の制限と外国人購入制限の複合的な影響は、現地のデベロッパーや販売代理店から聞くだけでは全体像が見えにくい構造になっています。
不動産に関するトラブルや疑問が生じた場合、公平な立場からアドバイスを受けられる機関への相談が有効な選択肢の一つです。個人差はありますが、専門家への相談を積極的に活用することで、リスクを抑えた意思決定に近づけると考えています。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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