AFP・宅建士として保険代理店勤務時代から富裕層の移住相談に関わり、自身もフィリピンでプレセールコンドミニアムを取得した私が、永住権比較の実態を正直に書きます。7カ国の取得条件・最低投資額・税制優遇を5つの判断軸で整理しました。制度は頻繁に改定されるため、必ず最新情報と専門家への確認をお勧めします。
永住権比較が重要な3つの理由——制度選びで10年が変わる
「住む国」を選ぶことは「課税される国」を選ぶことと同義
総合保険代理店に在籍していた頃、個人事業主や富裕層のお客様から「どこに移住すれば税負担が下がりますか」という相談を何度も受けました。当時の私には答えを持ち合わせていませんでしたが、今はAFPとして税制面を含めた比較ができます。
日本は居住者に全世界所得課税を適用します。永住権を取得して居住地を移せば、所得税・住民税の構造が根本から変わる可能性があります。ただし日本の非居住者認定には「生活の本拠を海外に移す」という実態が必要で、単に永住権を持つだけでは不十分です。この点は税理士への相談が不可欠です。
永住権比較を「どの国に住みたいか」だけで考えると、後から税務上の誤算が生じやすくなります。「どの国に課税関係を移したいか」という視点を最初から組み込むべきです。
投資永住権の条件は2023〜2025年に大幅改定が続いた
ポルトガルのゴールデンビザは2023年に不動産投資枠を廃止し、投資ファンド経由に切り替わりました。スペインも2024年にゴールデンビザの不動産投資ルートを終了しています。一方でUAE(ドバイ)は2022年以降、条件を緩和しながら制度を強化しました。
永住権比較は「2年前の情報」が既に使えなくなっているケースが多く、最新の現地法令と公式発表の確認が必須です。私自身、フィリピンのSRRV(特別居住退職者ビザ)の条件が変わったことを現地コンサルとの会話で初めて知ったことがあります。制度変更リスクは必ず織り込んでください。
筆者の実体験——フィリピン購入と保険代理店時代の移住相談
マニラ新興エリアのプレセール購入で学んだ「永住権との切り分け」
私がフィリピン・オルティガスでプレセールコンドミニアムを購入した時、最初に誤解していたことがあります。「不動産を買えばビザが取れる」という情報をどこかで読んでいたのです。
実際には、フィリピンの外国人向け投資ビザ(SRRV等)と不動産所有は別の話です。外国人は区分所有の場合、原則として建物全体の外国人持分比率40%以下の制限があり、土地は原則として取得できません。日本の宅建業法とはまったく異なるルールが適用されます。海外不動産は日本の宅建業法の対象外であり、現地法律の精通した専門家への相談が前提条件です。
購入価格は約500万〜700万円の範囲で、コンドミニアム1ユニット。SRRVの預託金要件(当時は2万USドル〜5万USドル規模)とは別途の資金手当てが必要でした。不動産を買えば自動的に永住権に近いビザが付いてくる、という認識は完全に間違いでした。
保険代理店時代に見た「ゴールデンビザ失敗例」の共通点
総合保険代理店で富裕層の資産相談を担当していた3年間で、移住計画が途中で頓挫するケースをいくつか見ました。共通していたのは「永住権取得を目的化してしまい、その後の生活設計が後回しになっていた」点です。
ある経営者の方はポルトガルのゴールデンビザに向けて不動産を取得しましたが、同時期に制度改定が重なり、想定していたルートが変更になりました。永住権比較の段階で「制度変更リスクのシナリオ」を持っていれば、別の選択肢を事前に検討できたはずです。
移住相談でAFPとしての役割は、金融商品の提案よりも「資金計画と制度リスクの整理」にあると私は考えています。永住権取得後の生活費・税務・資産移転のシミュレーションを先に作ることが、失敗を避ける上で有効です。
7カ国の取得条件早見表——最低投資額と期間を実数字で整理
投資額・居住義務・取得期間の3指標で比べると差が明確になる
以下は2024〜2025年時点の概要です。制度は随時改定されるため、必ず公式機関または専門家に確認してください。個人差・申請状況により異なります。
- UAE(ドバイ):不動産200万AED(約8,000万円)以上でゴールデンビザ10年。居住義務は実質的に緩やか。法人設立ルートも存在する。
- マレーシア(MM2H):改定後の条件は月収4万リンギット(約130万円)相当の証明と150万リンギット(約5,000万円)の定期預金が必要。居住義務は60日/年。
- フィリピン(SRRV):50歳以上で預託金2万USドル〜、35歳未満は7万5,000USドル規模(年齢・条件により異なる)。居住義務は比較的緩やか。
- ポルトガル(ゴールデンビザ):2023年以降は不動産投資ルート廃止、ファンド投資50万ユーロ以上が主軸。5年後に永住権申請が可能。居住義務は7日/年(1〜2年目)。
- マルタ:恒久居住権プログラムは政府拠点費用と不動産賃貸・購入を組み合わせ、総額40万〜50万ユーロ規模。
- カナダ(各州投資移民):連邦レベルの投資移民は一時停止中の時期もあり、州ごとの事業家移民が主流。100万〜200万カナダドル規模の純資産証明が一般的。
- タイ(LTRビザ):長期居住ビザ(永住権ではないが事実上の長期滞在)。高額資産保有者向けは80万USドル以上の投資が条件の一つ。
数字はあくまで概算であり、申請費用・税務・付帯条件は国ごとに大きく異なります。キプロス永住権と不動産投資|宅建士が35歳移住計画で検証した5観点
居住義務の「厳しさ」が実生活への影響を左右する
投資額だけで国を選ぶと、居住義務の縛りで日本の事業が維持できなくなるケースがあります。私は現在、東京で法人を経営しインバウンド民泊事業を運営しています。日本を完全に離れる前提ではないため、居住義務が年間180日を超える国はすぐに選択肢から外れます。
ドバイのゴールデンビザは居住義務の柔軟性が高く、法人設立との組み合わせで資産管理拠点を作りやすいという評価が移住相談の場でもよく聞かれます。ただし、UAE居住者認定と日本の非居住者認定は別の話であり、両方の専門家に相談することが必要です。
永住権の税制優遇5項目——比較で見えてくる構造的な差
キャピタルゲイン課税・相続税・贈与税の有無が資産家には直撃する
永住権比較で税制を語る時、注目される5項目があります。①キャピタルゲイン税、②相続税、③贈与税、④所得税率、⑤法人税率です。
UAEは個人レベルのキャピタルゲイン税・相続税・贈与税がなく、所得税もゼロです(2023年より法人税9%が導入)。マレーシアは海外源泉所得には原則課税されない期間が続いていましたが、2024年から段階的に課税対象が拡大される改定が加わりました。課税ルールは国によって異なり、改定頻度が高いため、必ず現地税理士への確認が必要です。
フィリピンは居住者への所得税率が最大35%と日本と大差なく、税制メリットを主目的にするなら他国との比較が必要になります。ポルトガルは「非常習的居住者(NHR)制度」が2024年に廃止・改定され、代替制度の条件が変わっています。ドバイ2026年最新動向|宅建士が移住計画で精査した7論点
日本の出国税と海外送金規制を永住権比較と同時に考える必要がある
AFPとして資産相談に関わる立場から強調したいのは、日本側の「出国税(国外転出時課税)」です。含み益が1億円以上の有価証券等を保有して非居住者になる場合、出国時点でキャピタルゲインに課税される制度が2015年から適用されています。
株式・ETF・米国REITを運用している私自身にとっても、この制度は将来的な移住計画に直結します。海外永住権を取得しても、日本側の税務処理を誤れば移住後も課税リスクが残ります。海外送金・税務は国によってルールが大きく異なるため、国内外の税理士と連携した対応が不可欠です。
暗号資産や銀地金を保有している場合も、国外転出時の取り扱いが通常の有価証券と異なるケースがあります。移住前の資産整理は、永住権比較と並行して税務専門家と詰めておくべき作業です。
まとめ——失敗しない永住権選定の5軸と次の一手
7カ国比較から導いた「選定で外してはいけない5軸」
- ①最低投資額と資金流動性:投資した資金がロックアップされる期間と出口戦略を事前に確認する。不動産購入の場合、売却流動性は国・エリアによって大きく異なる。
- ②居住義務の実態:年間必要滞在日数が現在の事業・生活と両立できるか。申請上の要件と実態運用の差を現地専門家に確認する。
- ③税制の全体像(入口・維持・出口):永住権取得後の税制優遇だけでなく、日本出国時の課税・取得後の維持コスト・将来の資産移転コストまでセットで試算する。
- ④制度変更リスクへの備え:ポルトガルやスペインの例のように、ゴールデンビザ制度は政治・経済情勢で改定される。複数の国・ルートを並行検討するプランBを持つ。
- ⑤現地専門家ネットワークの質:海外不動産・現地法律・税務は日本の宅建業法や税制と構造が異なる。信頼できる現地弁護士・税理士・不動産コンサルのネットワークが取得後の運用品質を決める。
ドバイを起点に動くなら法人設立と永住権をセットで設計する
現在の私が将来的なアジア圏移住に向けて調べている中で、ドバイは「法人設立による資産管理拠点」と「ゴールデンビザ」を組み合わせる設計の自由度が高いと感じています。フリーゾーン法人の設立コスト・維持コストと、永住権取得のための不動産取得コストのバランスを試算しやすい点も特徴です。
ただし、ドバイもUAEも制度改定が続いており、2022年以降の法人税導入・VAT拡大の動向は引き続き確認が必要です。移住計画は「今の制度前提」だけで組まず、制度変更後のシナリオも複数持つことを私は自分自身のプランニングでも意識しています。
ドバイへの移住や海外法人設立を具体的に検討し始めた段階では、専門サポートを活用することで手続きの手間と見落としを大幅に減らせます。以下のサービスは法人登記から移住サポートまでをカバーしており、検討の入り口として参考になります。専門家への相談を強くお勧めします。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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