ポルトガルのゴールデンビザ廃止は、海外移住を検討する日本人投資家にとって大きな転換点でした。私はAFP・宅地建物取引士として富裕層や個人事業主の資産相談を長年担当してきましたが、2023年以降「ポルトガルのビザはどうなるのか」という問い合わせが急増しました。本記事では廃止の経緯を正確に整理し、現在有効な代替移住ルートを実務視点から解説します。
ポルトガル ゴールデンビザ廃止の経緯を3分で整理する
2023年「モア・ハウジング法」が引き金になった
ポルトガル政府は2023年10月、「Mais Habitação(モア・ハウジング)法」を施行し、ゴールデンビザ(ARI:Autorização de Residência para Investimento)における不動産購入ルートおよびファンド投資ルートの新規受付を終了しました。表向きの理由は「国内の住宅価格高騰と居住者の住環境悪化の防止」です。リスボンやポルトのアパート価格は2015年比で約2〜3倍に上昇しており、ゴールデンビザ目的の外国人投資がその一因とされたのです。
ただし既存保有者の権利は維持されています。2023年10月7日以前に申請受理されたケースは引き続き更新・永住権取得のプロセスを進めることができます。「廃止=今すぐ全員が権利を失う」ではない点は、正確に理解しておく必要があります。
廃止前の制度概要と投資条件をおさらいする
廃止前のゴールデンビザは、EU圏の居住権とシェンゲン協定加盟国への自由往来を得られる制度として世界中の投資家から注目されていました。不動産購入ルートの最低投資額は一般エリアで50万ユーロ、低密度地域では40万ユーロとされていました。ポルトガルは法人税・所得税面での優遇制度(NHR:非常居住者課税制度)も持ち合わせており、資産家にとっての総合的な節税スキームとして機能していたわけです。
私が保険代理店時代に担当した富裕層のお客様の中にも、ポルトガルへの投資移住を具体的に検討されていた方が複数いました。当時はNHRと組み合わせた資産保全の提案が現実的な選択肢として成立していましたが、今の制度環境では同じスキームは使えません。海外の税務・法務は「国によって異なり、法改正で一夜にして状況が変わる」ことを改めて痛感した出来事でした。
私が移住相談で受けた質問トップ5——実体験から語る
フィリピン不動産購入時の経験が移住相談の土台になった
私自身、マニラの新興エリアであるオルティガス地区のプレセールコンドミニアムを購入しています。購入時の価格は日本円換算で約500〜700万円のレンジで、フィリピンペソ建てのため為替変動リスクは常に意識しています。この経験を通じて「海外で不動産を買う」という行為がいかに法制度・現地慣習・通貨リスクと密接に絡み合っているかを体感しました。
フィリピンでは外国人個人が土地を所有できないため、コンドミニアム(区分所有)という形態を選択しています。日本の宅建業法は国内不動産取引を規律するものであり、海外不動産には適用されません。私は宅建士として国内不動産の専門知識を持っていますが、海外不動産の取引においては現地弁護士・現地の宅建士相当資格者への確認が不可欠です。この点は移住相談でも必ず最初に伝えるようにしています。
相談者が最も多く聞いてきた5つの疑問
相談の場でよく受けた質問を整理すると、おおむね以下の5つに集約されます。①廃止後にポルトガルへの移住は一切できないのか、②代わりになる投資移住の国はどこか、③NHR制度はまだ使えるのか、④EU圏の居住権を得る別の方法はあるか、⑤日本の税務上の扱いはどうなるのか、という内容です。
このうち特に多かったのが②と④です。「ゴールデンビザ 代替」という視点で他のEU諸国を比較したいというニーズは2023年以降に明確に増えています。また⑤の税務については、海外移住時の日本の課税関係は個々の状況によって大きく異なるため、必ず税理士や公認会計士に個別相談するよう案内しています。私はAFPとして資産設計の枠組みは提示できますが、税務判断の最終確認は専門家への依頼を強くお勧めします。
廃止後も残る投資ルートの真実——ポルトガルはまだ選択肢か
D7ビザ・D8ビザという「非投資型」移住ルートが存在する
ゴールデンビザの不動産ルートが廃止された後も、ポルトガルへの移住手段は完全に消えたわけではありません。代表的なのが「D7ビザ(受動的収入ビザ)」です。D7は年金・賃料・配当・利子など安定した受動的収入を証明することで申請できる居住ビザであり、投資額の下限がない点が特徴です。2024年現在の一般的な目安として月収700ユーロ超(申請者本人分)の継続的収入証明が求められるとされています。
さらに2022年から導入された「D8ビザ(デジタルノマドビザ)」はリモートワーク収入を持つ外国人向けのビザです。ポルトガル国外の雇用主または複数クライアントからの収入を証明できるフリーランサーや個人事業主に向いています。最低収入基準はポルトガルの最低賃金の4倍相当とされており、2024年時点では月額約3,040ユーロ超が目安です。[INTERNAL_LINK_1]
NHR制度の改正とNHR2.0の現状を把握しておく
もう一つ押さえておくべき変化がNHR制度の改正です。従来のNHR制度は2024年1月に廃止され、後継として「IFICI(Incentivo Fiscal à Investigação Científica e Inovação)」、通称NHR2.0が施行されました。旧NHRのような広範な外国源泉所得の非課税優遇は縮小され、対象がIT・研究開発・スタートアップ等の特定職種に絞られています。
ポルトガル移住を検討するなら、旧来の「投資+節税」という組み合わせがそのまま使えるという前提は捨てる必要があります。現行制度の細部は頻繁に変わるため、ポルトガル現地の税務専門家への相談が必須です。為替リスク(ユーロ/円)も無視できません。私はハワイのタイムシェアを米ドル建てで維持管理していますが、円安局面での維持コスト増加は実感として大きく、海外資産における通貨リスクは常に想定しておくべきコストです。
代替となる海外移住先5選を比較——投資移住廃止後の選択肢
EU圏・欧州周辺で検討できる3カ国
ポルトガルのゴールデンビザ廃止を受けて注目度が上がっているEU・欧州の投資移住先として、まずギリシャ・スペイン・マルタの3カ国が挙げられます。ゴールデンビザ ギリシャは、2024年に主要エリアの最低投資額が40万ユーロに引き上げられましたが、一部地域では25万ユーロのルートが継続されており、EU圏の居住権取得スキームとして引き続き有効です。スペインは2024年にゴールデンビザの不動産ルート廃止を発表しており、申請検討者は最新情報の確認が急務です。マルタは個人投資家プログラム(MEIN)を通じたEU市民権取得が可能な稀有な国ですが、費用は数十万ユーロ規模になります。
いずれの国も、投資要件・税制・言語環境・生活コストが異なります。「EU居住権が欲しいから」という理由だけで国を選ぶのではなく、実際の生活基盤をどこに置くかという視点で選択することが長期的に重要です。また海外送金・現地口座開設の難易度も国によって大きく異なるため、事前調査は必須です。[INTERNAL_LINK_2]
アジア圏で現実的な3つの選択肢
私自身が将来的なアジア圏への移住を計画しているという立場から、アジアの投資移住ルートも実感を持って語ることができます。まずマレーシアの「MM2H(マレーシア・マイ・セカンドホーム)プログラム」は、2021年の大幅改定で条件が厳格化されましたが、2023年以降は中間層向けの新カテゴリも設けられ、複数のルートが整備されています。次にタイは「LTR(Long-Term Resident)ビザ」を2022年に導入し、富裕層・リモートワーカー・リタイアメント層向けに最長10年の居住権を提供しています。そしてフィリピンの「SRRV(特別退職居住者ビザ)」は、PRA(フィリピン退職庁)が管轄し35歳以上から申請でき、1万〜2万ドル程度のデポジットで永続的居住権が得られる制度です。
私がフィリピンに不動産を保有しているのも、将来の移住先候補として現地との接点を持っておくという意味合いがあります。ただしどの国においても、移住後の税務上の扱いは日本の非居住者認定要件と密接に絡むため、事前に国際税務に詳しい専門家への相談を強くお勧めします。個人の状況によって最適な選択肢は異なります。
まとめ:ゴールデンビザ ポルトガル 廃止後に今から動くべき3ステップ
整理すべき3つのアクションポイント
- ステップ1:現状の制度を正確にアップデートする——ポルトガルの不動産ゴールデンビザは2023年10月に新規受付終了。D7・D8ビザ、NHR2.0の現行条件を公式ソースで確認し、旧来の情報で判断しないことが大前提です。
- ステップ2:代替先を1〜2カ国に絞り込んで専門家に相談する——ギリシャ・マレーシア・タイ・フィリピンなど代替の投資移住先をリストアップし、国際税務・現地弁護士・ビザ専門コンサルタントへの相談を同時並行で進めます。「まず自分で調べる」のは大切ですが、実行段階では必ず専門家を介することをお勧めします。
- ステップ3:移住前の資金流動性を確保しておく——海外移住の初動では予想外の出費が集中します。投資資金を海外に固定する前に、手元の流動資金をある程度確保しておくことが現実的なリスク管理です。特にフリーランス・個人事業主の方は収入の時間差が生じやすいため、資金繰りの手段を複数持っておくことが重要です。
資金の流動性を確保するために知っておきたいこと
私が保険代理店時代に担当した個人事業主のお客様の中には、海外投資の初期費用を捻出するために手元資金が一時的にひっ迫した方が複数いました。特に請求から入金まで時間がかかるフリーランスや個人事業主にとって、報酬の受け取りタイミングは資産運用計画に直結します。
そうした状況を緩和する手段として、フリーランス・個人事業主向けの報酬即日先払いサービスの活用は選択肢の一つです。移住準備中に資金が動きにくい局面では、手元キャッシュを安定させる仕組みを持っておくことが、焦らず最適な意思決定を行うための土台になります。なお、どのような金融サービスも利用条件や手数料を十分に確認した上で、ご自身の判断で検討してください。
