AFP・宅地建物取引士として国内外の不動産に長く関わってきた私が、2025年に実施したベトナム現地視察をもとに、2026年版のベトナム不動産おすすめ選定基準をまとめます。外国人所有制限の制度変更、ホーチミン新興エリアの価格動向、出口戦略の現実まで、実務視点で包み隠さず解説します。
ベトナム不動産2026の市況と外国人投資家への影響
2023年住宅法改正がもたらした構造変化
2023年にベトナムで改正住宅法が成立し、2025年から段階的に施行されています。私がホーチミン市ビンタン区を視察した際、現地の不動産弁護士から直接聞いた内容では、外国人が区分所有できる住戸数の上限(1棟あたり30%、1行政区あたり250戸)は維持されつつも、所有権の更新手続きが以前より整備されたと説明を受けました。
外国人の所有期間は原則50年で、更新が可能です。ただしこの「更新が可能」という表現に注意が必要で、更新申請の具体的な手続きは2026年時点でもまだ細則が整備されている途中です。現地弁護士への確認は投資前の必須ステップと考えてください。
ベトナムドン(VND)建ての価格表示が一般的なため、円安局面では円換算の取得コストが膨らむ点も見落とせません。為替リスクは海外不動産投資共通の課題であり、ベトナムも例外ではありません。
ホーチミンとハノイ、2026年に注目すべき違い
2026年のベトナム不動産市場でおすすめとして語られるエリアは、大きくホーチミン市の新興区(トゥドゥック区・ビンタン区)とハノイ市の西部開発エリアに絞られます。私が視察したホーチミンでは、地下鉄1号線(ベンタイン〜スオイティエン)の開通効果が周辺コンドミニアムの賃料相場に反映され始めていました。
一方ハノイは日系・韓国系企業の工場進出に伴うエクスパット需要が底堅く、2ベッドルーム・月額1,200〜1,800USD程度の賃貸需要が安定しているというデータを現地エージェントから入手しました。ただし数字はエリアや物件グレードで大きく異なるため、あくまで参考値として捉えてください。
どちらのエリアを選ぶかは出口戦略(賃貸収入重視か売却益重視か)で変わります。これが後述する7選定基準の土台になります。
フィリピン物件保有の経験が教えてくれたこと
プレセール契約で学んだ「書類リスク」の実態
私はフィリピン・マニラの新興エリアでプレセールコンドミニアムを購入し、現在も保有しています。購入時の総額は約3,500万円相当で、現地デベロッパーとの契約書は英語とフィリピン語の併記でした。AFP・宅建士の資格を持つ私でも、日本の宅建業法とはまったく異なる制度体系に最初は戸惑いました。
特に衝撃だったのは、竣工前に変更されていたフロアプランと、管理費の算定根拠が曖昧だった点です。日本の宅建業法では重要事項説明書に明示が義務づけられている項目が、海外では当然には保護されません。この経験から、私はベトナムでの物件調査時にも「契約前の現地弁護士レビュー」を最優先事項に置いています。
フィリピンとベトナムは外国人所有の法体系が異なりますが、「デベロッパーの財務健全性を独立した専門家が確認する」という原則は共通です。個人差はありますが、この確認作業を省略した結果トラブルになったケースを、保険代理店時代の富裕層相談でも複数聞いています。
総合保険代理店時代に見た「失敗した海外不動産投資」の共通点
総合保険代理店に勤務していた3年間、個人事業主や富裕層の資産相談を多数担当しました。その中でベトナムやフィリピンの不動産で思うような成果が得られなかった方の相談を複数受けた経験があります。共通していたのは3点です。
1点目は現地視察なしのオンライン購入。2点目は出口(売却先)を想定せず賃料収入だけを期待した計画。3点目は日本の税務申告(海外不動産所得の申告義務)を把握していなかったことです。海外不動産の賃料収入は日本居住者であれば原則として日本の所得税申告が必要で、現地の課税ルールと二重になる場合もあります。税務については必ず税理士への相談を推奨します。
現地視察で見えた7つの選定基準
基準1〜4:立地・法務・デベロッパー・賃貸需要
基準1:駅・幹線道路からの徒歩距離。ホーチミン市内では地下鉄沿線500m以内の物件と1km超では賃料に明確な差が出始めています。私が視察した複数物件でも、駅徒歩7分圏の2LDKと徒歩15分圏では月額賃料に150〜200USD前後の開きがありました。
基準2:外国人所有枠の残数確認。1棟あたり30%上限のため、人気物件ではすでに外国人枠が埋まっているケースがあります。購入前に管理組合またはデベロッパーから書面で確認することが欠かせません。
基準3:デベロッパーの竣工実績。ベトナムでは過去に竣工遅延や変更が生じた事例が報告されています。過去5年以内に複数棟を予定通り竣工させた実績があるか、現地弁護士を通じて確認します。
基準4:エクスパット・ローカル双方の賃貸需要。日本人駐在員だけをターゲットにすると空室リスクが高まります。ローカル富裕層・外資系企業社員双方が借りやすいグレードと価格帯かどうかを確認します。アブダビ不動産投資の実体験|宅建士が5つの判断軸で検証した2027年版
基準5〜7:為替・出口・税務申告
基準5:為替ヘッジの考え方。ベトナムドンは米ドルに緩やかに連動していますが、円との直接換算では変動幅が大きくなります。投資資金の一部をドル建て資産でカバーするなど、ポートフォリオ全体での為替リスク管理が必要です。私自身、フィリピン物件とハワイのリゾート物件で異なる通貨エクスポージャーを持っているため、この感覚は実務で養ったものです。
基準6:出口戦略の現実的なシナリオ。外国人が売却する場合、買い手も外国人枠の制約を受けます。ローカルへの売却も選択肢ですが、価格交渉力はローカル市場の慣習に左右されます。「5〜7年後にどこに売るか」を購入前に想定しておくことが、長期的な資産形成では特に重要な視点です。
基準7:日本での税務申告体制。ベトナムでの賃料収入は日本の確定申告で雑所得または不動産所得として申告が必要です。現地の源泉徴収と日本の外国税額控除の関係は国によって異なります。税理士・FPへの相談を前提に投資計画を組むことを強く推奨します。売掛金 早期回収 方法7選|AFP宅建士が500人相談で導いた実例
ホーチミン中心部の利回り実例と私が避けた3つの失敗パターン
2025年視察で確認した賃料・価格相場の実態
私が2025年に視察したホーチミン市トゥドゥック区の新築コンドミニアム(1ベッドルーム、約45㎡)は、販売価格が約2,200〜2,800USD/㎡の帯に集中していました。月額賃料は600〜900USDが中心で、表面利回りは4〜6%程度という水準です。
ただしこの数字は満室・安定稼働を前提とした表面利回りです。管理費・固定資産税相当(ベトナムでは土地使用料)・空室期間・送金コストを差し引いた実質利回りは2〜4%程度に下がるケースが多いと現地エージェントから聞いています。フィリピンのプレセール購入時も同様に表面と実質の乖離があったため、この視点は必ずチェックします。
数字はエリア・物件グレード・時期によって大きく変動します。あくまで私が視察時点で収集した参考値であり、投資判断の根拠とするには個別の詳細調査が必要です。
現地視察で気づいた「避けるべき3パターン」
パターン1:外国人向け専用プロジェクトの過剰依存。外国人向けとして販売されている物件は初期費用にマージンが上乗せされているケースがあります。私は視察時に、同エリアのローカル向け物件と外国人向け物件の坪単価を比較し、20〜30%の価格差を確認しました。割高感があると出口での値上がり余地が限られます。
パターン2:竣工3年未満のデベロッパーからのプレセール。竣工実績が少ないデベロッパーのプレセールは、工期遅延や仕様変更のリスクが相対的に高いと判断しています。私がフィリピンで経験したトラブルの教訓をそのまま活かしています。
パターン3:現地管理会社を選ばずにリモート管理を試みること。ハワイのタイムシェアで管理会社とのやり取りを経験しましたが、言語・時差・現地慣習の壁は思った以上に大きいです。ベトナムでは信頼できる現地管理会社との契約を物件選定と並行して進めることを検討する価値があります。
まとめ:2026年のベトナム不動産投資で押さえるべき視点
7基準を整理して行動に移すためのチェックリスト
- 外国人所有枠の残数を書面で確認する(法務デュー・デリジェンス必須)
- デベロッパーの過去5年の竣工実績を現地弁護士経由で調査する
- 駅・幹線道路からの距離と将来インフラ整備計画を地図で照合する
- 表面利回りだけでなく、管理費・空室リスクを反映した実質利回りで試算する
- 出口(5〜7年後の売却先・買い手層)を購入前にシナリオとして想定する
- ベトナムドン・米ドル・円の三重の為替リスクをポートフォリオ全体で管理する
- 日本での税務申告(海外不動産所得)について税理士に事前確認する
不動産トラブルを未然に防ぐために活用できる相談窓口
海外不動産は日本の宅建業法の保護対象外です。私が宅建士として言えるのは、「日本国内の取引ルールをそのまま海外に当てはめると大きな落とし穴がある」という点です。現地弁護士・税理士への相談と並行して、日本側の専門家チェックも組み合わせることが、資産を守る上で合理的な選択肢の一つです。
また、すでに海外不動産を保有していて契約内容や管理状況に不安を感じている方は、公平な立場から査定・相談を受けられる窓口を活用することも検討してみてください。個人差はありますが、早期に専門家へ相談することでトラブルの拡大を防げるケースは少なくありません。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
本記事のリンクはアフィリエイトリンクを含みます。
