AFP・宅建士として資産相談に関わってきた私が、将来的なアジア圏移住を視野に入れながら「スペインはどうか」と本格的に調べ始めたのは2023年のことです。ポルトガル・マレーシア・タイ・UAEの4カ国と横並びで比較した結果、スペイン移住の「強みと落とし穴」が浮き彫りになりました。スペイン 移住 比較に悩む方に、実務視点で7論点を整理します。
スペイン移住の5カ国比較軸:何を基準に選ぶべきか
比較5カ国の選定理由と共通フレームワーク
私が比較対象に選んだのは、スペイン・ポルトガル・マレーシア・タイ・UAEの5カ国です。選定基準は「日本人が合法的に長期滞在しやすいビザ制度がある」「不動産による資産形成の選択肢がある」「医療水準が一定以上」の3点です。
この3条件を満たす国は実は多くなく、5カ国に絞るとそれぞれ特色がはっきりします。UAEはゼロ税率が魅力ですが生活コストが高い。マレーシアはMM2Hビザが2021年に厳格化されて条件が跳ね上がりました。タイはリタイアメントビザが使いやすい反面、外国人による土地所有に制限があります。
ポルトガルはスペインと同じEUで比較されやすいですが、ゴールデンビザ制度が2023年10月に不動産投資ルートを事実上閉鎖したことで状況が大きく変わっています。スペインも2025年4月にゴールデンビザの一部要件見直しが議論されており、2027年時点での条件は現時点から変化する可能性がある点は念頭に置いてください。
移住先比較で見落とされがちな「出口戦略」の視点
移住先比較の記事では入口のビザ条件や生活コストに注目が集まりますが、私が保険代理店時代に富裕層の資産相談を担当してきた経験から言うと、「どう出るか」を先に考えた人ほど失敗が少ないです。
具体的には「永住権取得後に日本の不動産をどう処分するか」「海外での資産形成を日本の相続税とどう整合させるか」という論点です。スペインの場合、居住者になると全世界所得課税が発生するため、日本で賃料収入や配当収入を持つ方は税務上のインパクトが大きくなります。この点は後述する税務セクションで詳しく触れます。
移住先比較はビザの取りやすさだけでなく、資産全体の設計図の中で「どこに自分を置くか」という問いに答えるプロセスです。専門家への相談を推奨する理由はここにあります。
私がフィリピン購入後にスペインを再検討した理由
オルティガスのプレセール購入で学んだ新興国リスク
私はマニラの新興エリアであるオルティガスでプレセールコンドミニアムを購入しています。購入価格はUSDベースで約6万ドル台の小型ユニットで、頭金を複数回に分けて送金した経験があります。この購入を通じて痛感したのは「現地法律・為替・デベロッパーリスクが三重に重なる」という新興国特有の構造です。
フィリピンでは外国人がコンドミニアムの区分所有権を持つことは合法ですが、土地の所有は原則として外国人に認められていません。宅建士として日本の不動産取引に関わってきた私にとって、この「所有の非対称性」は最初かなり不安でした。日本の宅建業法では重要事項説明で権利関係を明確にする義務がありますが、フィリピンではその仕組みが異なります。現地の法律事務所に権利調査を依頼したコストも含めて、トータルで考える必要があります。
この経験があったからこそ、スペインというEU加盟国の「法制度の透明性」は改めて魅力に映りました。EU域内の不動産取引は各国の違いはあるものの、コモンローや英米法系の国と比べても書面主義・公証人制度が整っており、取引の透明性が比較的高い環境です。為替リスクはユーロ建てになるため円安・円高の影響を受ける点は変わりませんが、通貨の安定性という観点ではフィリピンペソとは異なります。
ハワイのタイムシェア運用で見えた「先進国不動産」のコスト構造
私はハワイの主要リゾートエリアでマリオット系タイムシェアも保有しています。タイムシェアは純粋な投資商品ではなく、利用権と管理費負担の組み合わせです。毎年発生するメンテナンスフィーは年間約1,500〜2,000ドル程度で、これは「先進国・リゾートエリアの不動産を保有するコスト」の現実を教えてくれます。
スペインの地中海沿岸やマドリードで不動産を購入・保有する場合も、固定資産税(IBI)・コミュニティ費・非居住者向け所得税(IRNR)などの継続コストが発生します。ハワイで「保有コストをなめると痛い目を見る」と学んでいたため、スペインの不動産を試算する際も維持費を含めたネット利回りで考えるクセがつきました。この視点は後述する不動産セクションで具体的に展開します。
ゴールデンビザ条件の違い:スペインと4カ国の現状
スペイン・ゴールデンビザの2024〜2027年の変化点
スペインのゴールデンビザは2013年に創設され、50万ユーロ以上の不動産購入が主要ルートとして機能してきました。ところが2024年、スペイン政府のペドロ・サンチェス首相が住宅問題を理由に「不動産ルートの廃止」を宣言し、議会審議が続いています。2025年時点でまだ制度が完全廃止されたわけではありませんが、2027年に向けて制度が変化する可能性が高い状況です。
これはポルトガルが2023年に不動産ルートを閉鎖したことと同じ流れです。EUでは「ゴールデンビザが住宅価格を押し上げる」という批判が政治課題になっており、スペインも例外ではありません。スペインゴールデンビザを検討する方は、2027年時点での制度の最新情報を必ず現地弁護士または移住専門家に確認してください。制度の詳細は変更されている可能性があります。
4カ国との条件比較:投資額・滞在要件・家族帯同
海外移住 比較の観点で、5カ国のビザ条件を整理します。UAEの投資家ビザは約204万AED(約80万USD相当)の不動産購入で10年ゴールデンビザが取得可能で、家族帯同も認められています。マレーシアのMM2Hは2021年改定後、月収1万5千リンギット証明・定期預金150万リンギット(約4,500万円)が必要となり、従来より大幅にハードルが上がりました。
タイのタイランドエリートビザは年間約140万円〜のメンバーシップ料金で5〜20年の滞在許可が得られますが、就労は認められません。資産形成目的で滞在するなら活動制限に注意が必要です。ポルトガルは不動産ルート廃止後、VCファンドへの35万ユーロ投資等が残るルートとなっています。スペインも不動産ルートが使えなくなる場合、同様に金融資産ルート(現行100万ユーロ超の株式・ファンド投資等)が残る可能性がありますが、確定情報は専門家に確認してください。
私が宅建士の立場でこれらを比べると、法的安定性・永住権取得要件・EU域内移動の自由という三つが揃うスペイン・ポルトガルは、アジア圏の国々と性質が大きく異なる選択肢だと感じます。アブダビ不動産投資の実体験|宅建士が5つの判断軸で検証した2027年版
不動産価格・生活コスト・税務の実態
スペイン不動産の価格帯とネット利回りの現実
スペイン不動産の価格は都市によって大きく異なります。マドリード中心部では2024年時点で平均㎡単価が4,000〜5,000ユーロ台に達しており、バルセロナも同様の水準です。一方、バレンシア・セビリア・マラガなどの地方都市では2,000〜3,000ユーロ台の物件も見られます。
グロス利回りで見ると、短期賃貸(観光向け)が規制される地域が増えており、長期賃貸ベースでは4〜6%程度が一つの目安とされています。ただし、ここから固定資産税・管理費・修繕積立・非居住者税を差し引いたネット利回りは2〜4%程度に落ち着くケースが多いです。ハワイのタイムシェアで「保有コストの重さ」を体験していた私には、この計算が実感として入ってきます。個人差があります。実際の数値は物件・立地・管理形態によって大きく変わりますので、現地の税理士と事前にシミュレーションすることを推奨します。
スペイン不動産購入時の取得コストも見落とせません。不動産移転税(ITP)は中古物件で州によって6〜10%、新築はVAT(IVA)10%がかかります。日本の不動産取得と同様に、購入価格の10〜13%程度を諸費用として見込む必要があります。
生活コストと税務:全世界所得課税の重さを直視する
スペインの生活コストはEU内では中程度です。マドリードの家賃は1LDK相当(60〜70㎡)で月1,200〜1,800ユーロが目安。バレンシアやセビリアなら800〜1,200ユーロ程度に下がります。食費は外食でも日本と大きくは変わらず、スーパーの物価は日本より安い品目も多いです。医療は公的保険制度(SNS)の水準が高く、EU在住者であれば利用できる仕組みがありますが、日本人が当初移住する段階では私的医療保険の加入が現実的です。
税務面では、スペイン居住者になると所得税(IRPF)が全世界所得に課税されます。累進税率は最高47%(国税)で、州税を加えると実効税率がさらに上がる地域もあります。日本に不動産や株式配当収入がある方は、スペイン居住者になることで日本の源泉徴収に加えてスペインでの申告義務が生じる可能性があります。日西租税条約は存在しますが、二重課税の扱いは個別の状況によって異なります。必ず税務の専門家に相談してください。
なお、「ベッケンハム法(Ley Beckham)」と呼ばれる非居住者特例税制では、スペインに移住した外国人労働者が一定条件下で居住者となった最初の6年間、フラットレート24%で課税される優遇制度があります。ただし適用要件が厳しく、すべての方が対象になるわけではありません。売掛金 早期回収 方法7選|AFP宅建士が500人相談で導いた実例
私が出した結論と7論点の整理:移住先比較のチェックリスト
スペイン移住を検討する際の7論点まとめ
- ①ゴールデンビザの動向:不動産ルートは廃止方向で議論中。2027年の制度は現状から変化している可能性が高く、申請前に必ず最新情報を確認する
- ②不動産取得コスト:購入価格に加えITP/IVA・公証人費用・登録費等で購入価格の10〜13%が追加コストとして発生する
- ③ネット利回り:グロス利回りから税・管理費を差し引くと2〜4%台が現実的な水準。投資目的で購入する場合は厳しいシミュレーションが必要
- ④全世界所得課税:居住者認定後は日本の資産収入もスペイン課税の対象になる可能性があり、税務計画が欠かせない
- ⑤生活コスト:マドリード・バルセロナは高騰しているが、地方都市はEU水準で比較的手頃。医療水準は高く生活の質は高い
- ⑥為替リスク:ユーロ建て資産は円/ユーロレートの影響を受ける。2024年時点で1ユーロ=160円前後で推移しており、円高局面では資産評価が下がるリスクがある
- ⑦出口戦略・相続:日本の相続税法上、海外に居住していても一定期間は課税対象になる規定がある。移住前に相続・贈与の観点でも専門家と整理しておくことを強く推奨する
私の現時点の結論と不動産トラブルへの備え
私自身の結論から言うと、スペイン移住は「生活の質・法制度の安定性・EU域内移動の自由」という観点で5カ国の中でも特徴的な選択肢です。ただし、2027年に向けてゴールデンビザの不動産ルートが使えなくなる可能性が高く、不動産投資と移住ビザをセットで考えていた方は計画の見直しが必要です。
私がフィリピンのプレセールを購入した際も、最初の問い合わせから契約・送金・権利証受領まで、トラブルの芽は複数ありました。日本国内の不動産でも同様で、購入・売却・賃貸の各フェーズで「知らなかったから損をした」というケースは保険代理店時代の相談でも頻繁に見てきました。海外不動産はさらに言語・法律・商慣習の壁があります。
日本国内の不動産を売却・整理してから海外移住の資金を作るというプロセスを考えている方には、まず国内不動産の現状価値を公平な目線で把握することが出発点になります。専門家への相談を推奨します。個人差があります。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
本記事のリンクはアフィリエイトリンクを含みます。
