ポルトガルのゴールデンビザ不動産投資枠が2023年に廃止されたことは、海外移住を計画する日本人にとって大きな転換点となりました。私はAFP・宅建士として移住相談を500件以上担当してきましたが、この変化を機に「次の一手」を見失う相談者が急増しています。本記事では、ゴールデンビザ終了の影響と、富裕層が選び始めた5つの代替戦略を実務視点で整理します。
ゴールデンビザ終了の経緯と現状|海外移住計画への直撃
なぜ不動産投資枠だけが廃止されたのか
ポルトガル政府が2023年2月にゴールデンビザの不動産投資枠廃止を発表し、同年10月に正式に制度変更が施行されました。表向きの理由は「リスボンやポルトの住宅価格高騰を招いた」というものです。実際、2017年から2022年の間にリスボン市内の住宅価格は60%以上上昇しており、地元住民の購入力を著しく毀損したと批判されていました。
ただし、ゴールデンビザ制度そのものが消滅したわけではありません。不動産投資ルートが閉じられただけで、ファンド投資(50万ユーロ以上)や研究・芸術への寄付(25万ユーロ以上)、雇用創出といった代替ルートは継続されています。この点を誤解したまま「ポルトガルは終わった」と判断するのは早計です。
廃止後に起きた3つの連鎖反応
不動産枠廃止が確定してから、私が担当した相談件数は四半期で約1.8倍に増加しました。相談内容は大きく3パターンに分かれます。
第一に、「申請中の案件はどうなるか」という問い合わせです。廃止前に申請手続きを開始していた案件は経過措置が適用されるケースがあり、個別の状況によって対応が異なります。これは現地の移民局(SEF/AIMA)および移住専門の弁護士への確認が不可欠です。
第二に、「代替先をどこにすべきか」という相談です。EU永住権・市民権への最短ルートを求めていた層が、一斉に他のEU加盟国や非EU圏の富裕層ビザを調べ始めました。第三に、「そもそも不動産投資型ビザにこだわる必要があるか」という根本的な再設計の相談で、これが実は資産形成の観点からもっとも重要な問いだと私は考えています。
不動産投資枠廃止が資産形成に与えた3つの影響|私の相談現場から
フィリピン・プレセール投資との比較で見えた構造的差異
私は現在、フィリピン・マニラの新興エリアでプレセールコンドミニアムを所有しています。取得時の価格は日本円換算で約700万円台で、ポルトガルのゴールデンビザ取得に必要だった不動産投資額(当時の基準で28万〜50万ユーロ)とは桁が違います。
この経験があるからこそ言えるのですが、「ビザ取得のための不動産投資」と「資産形成のための不動産投資」は根本的に目的が異なります。ポルトガルのゴールデンビザ不動産は、ビザという特典に対して割高な物件を購入させられる構造が多く、純粋な投資リターンを期待しにくい側面がありました。廃止されたことで、この「ビザのために過剰な投資を強いられる」構造から抜け出せるとも解釈できます。
保険代理店時代に見た富裕層の意思決定パターン
私は以前、総合保険代理店に3年間在籍し、個人事業主や富裕層の資産相談を多数担当していました。その経験から言うと、資産1億円以上の層は「ビザのために資産を固定する」ことへの抵抗感が強い傾向があります。
ポルトガルのゴールデンビザが不動産枠を持っていた頃、相談に来た複数のクライアントが「現地の物件を5年間売却できないのが気になる」と口にしていました。不動産投資を「移住コスト」として割り切れる人だけが踏み切れる制度だったわけです。廃止後は、より流動性の高いファンド投資や、他国の居住権取得スキームへの関心が一気に高まっています。
代替先5カ国の比較分析|EU永住権と富裕層ビザの現実
EU圏4カ国の代替ビザ制度を整理する
ポルトガルのゴールデンビザ廃止を受け、EU永住権・市民権を目指す層が注目している代替先を整理します。まず、マルタのリジデンシー・バイ・インベストメント(MPRP)は、不動産購入・賃貸と政府への寄付を組み合わせた仕組みで、EU居住権への入り口として機能します。取得費用の目安は不動産購入の場合で35万ユーロ以上です。
次にギリシャのゴールデンビザは、2023年に一部エリアで投資基準が25万ユーロから50万ユーロへ引き上げられたものの、制度自体は継続中です。イタリアには「エルカンターレビザ」ではなく、技術系起業家向けのスタートアップビザや、年間所得税を10万ユーロの定額とする「グローバルノマド向けフラットタックス制度」があり、富裕層に選ばれる選択肢として注目されています。スペインのゴールデンビザも2024年に廃止が議論されましたが、執筆時点では継続されており、50万ユーロ以上の不動産投資で申請可能です。
非EU圏|UAEとマレーシアが急浮上している理由
EU圏にこだわらない層にとって、UAE(アラブ首長国連邦)のゴールデンビザは現在もっとも注目度が高い選択肢の一つです。200万ディルハム(約8,000万円前後)以上の不動産投資や、事業収益の証明などで10年間の長期居住権を取得できる仕組みが整っています。税制面では個人所得税・キャピタルゲイン税が存在しないため、日本の税制と比較した資産設計の自由度が高い点が評価されています。ドバイ アパート投資の失敗例|宅建士が警戒する5つの罠
マレーシアの「MM2H(マレーシア・マイ・セカンドホーム)」プログラムは、2021年に要件が大幅に厳格化されましたが、月収1万5,000リンギット以上の証明や150万リンギット以上の資産証明などを満たせば引き続き申請可能です。アジア圏への海外移住を将来的に計画している私自身も、移住先候補として研究しています。ただし、各国の制度変更は頻繁に起こるため、最新情報は必ず専門家と移民局の公式情報で確認してください。
私の移住計画への影響と修正|35歳移住目標の再設計
ポルトガルを検討リストから外した理由
私はAFP・宅建士として、また現在は東京都内で法人を経営しインバウンド民泊事業を運営する立場として、将来的なアジア圏への海外移住を計画しています。正直に言うと、数年前はポルトガルのゴールデンビザも移住候補の一つとして調べていました。
当時の試算では、不動産投資枠の28万ユーロ(約4,000万円前後)を使ったとしても、ポルトガルの物件から期待できる賃貸利回りは年率3〜4%程度で、為替リスクを考慮すると純粋な投資としての魅力は限定的でした。さらに、日本の宅建業法は国内不動産取引を規律するものであり、ポルトガルを含む海外不動産には適用されません。現地の法制度・所有権の性質・税務処理は日本と根本的に異なるため、現地の弁護士および税理士への相談は必須です。この「見えないコスト」が想定以上に大きいと判断し、検討リストから優先順位を下げました。
資産分散の軸をアジア圏に再設定した実務プロセス
移住計画の修正において、私が軸にしたのは「居住権と資産分散を切り離して考える」という発想です。ポルトガルのゴールデンビザは両者をセットにしていましたが、廃止を機に多くの相談者が気づいた通り、居住権取得と資産形成は必ずしも同一の手段で達成する必要はありません。
私の場合、フィリピンのプレセールコンドミニアムはあくまで資産形成の一環として保有しており、居住権とは切り離しています。ハワイのタイムシェアは資産というよりライフスタイル確保の側面が強く、運用収益を期待するものではありません。株式・ETF・米国REITは円建て資産への過度な集中を避けるための分散手段として機能させています。移住先の候補については、UAEとマレーシアを中心に、現地の弁護士や税務専門家との接触を含めて情報収集を継続中です。海外送金や現地課税ルールは国によって大きく異なるため、専門家への相談なしに動くことは避けるべきだと考えています。ドバイ アパートメント賃貸運用のコツ|宅建士が2030年購入計画で固めた7軸
資産分散で備える実務手順|ゴールデンビザ廃止後の正しい動き方
今すぐ見直すべき5つのチェックポイント
- 移住目的と資産形成目的を明確に分離し、ビザ取得に資産を「縛る」構造になっていないか確認する
- 検討中のビザ・居住権制度が直近12〜24ヶ月で要件変更を受けていないか、現地の公式情報源で確認する
- 海外不動産は日本の宅建業法の対象外であるため、現地の法律・所有権形態・外国人所有制限の有無を必ず専門家に確認する
- 為替リスクを必ず試算に組み込む。ユーロ建て・ドル建て資産が円高局面でどのように評価額が変化するか、複数シナリオを用意する
- 海外送金・現地課税・日本での課税(国外財産調書・確定申告義務など)について、国際税務に詳しい税理士に相談してから動く
ドバイ・海外法人設立を代替戦略に組み込む視点
ポルトガルのゴールデンビザ廃止後、私が相談を受けるケースで急増しているのが「UAEへの法人設立と居住権取得の組み合わせ」です。ドバイには複数のフリーゾーンがあり、外資100%所有の法人を設立できる仕組みが整っています。法人設立を通じてビザ申請の基盤を作り、事業収益の管理と居住権を同時に取得する手法は、純粋な不動産投資型ビザより流動性が高く、事業を持つ個人事業主や法人オーナーに向いている選択肢の一つです。
ただし、ドバイ法人設立にも会計・税務・コンプライアンスのコストが発生します。「税金がかからない」という情報だけを鵜呑みにするのは危険で、日本に住民票を残したまま海外法人を持つ場合には、日本での課税関係が生じる可能性があります。この点は国際税務の専門家への確認が必須です。個人差があり、一概に「これが正解」とは言えません。まずは専門家に現状を相談することが、遠回りに見えて実際には一番の近道です。
海外法人の設立サポートや、ドバイへの移住検討に際しては、専門のサービスを活用することを検討する価値があります。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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