永住権取得費用は「申請料だけ」を見ると大きく判断を誤ります。私はAFP・宅建士として富裕層の資産相談を担当してきた経験と、フィリピンでのプレセールコンドミニアム購入・ハワイでのタイムシェア所有という実物投資の体験をもとに、7カ国の永住権取得費用を申請料から隠れコストまで5項目で精査しました。将来のアジア移住を計画する私自身の判断軸もすべて公開します。
永住権取得費用の全体像:なぜ「公式料金」だけでは足りないのか
費用を構成する5つの項目
永住権の取得費用を正確に把握するには、少なくとも5つの費用項目を合算する必要があります。①政府への申請料(Government fee)、②必要投資額または資産要件、③弁護士・移民コンサルタント報酬、④健康診断・身元調査などの準備費用、⑤取得後の維持費用(更新料・最低滞在日数を満たすための渡航費)です。
公式サイトや移住系ブログで紹介される金額の多くは①のみ、もしくは①+②にとどまります。実際に保険代理店時代に富裕層の方から「聞いていた金額の倍以上かかった」という相談を複数受けた経験から、私は費用の全体構造を最初に整理することを習慣にしています。
さらに海外不動産への投資が条件となるケースでは、為替リスクも無視できません。投資額はドルやユーロ建てで表示されるため、円安が進むほど円換算コストが膨らみます。この点は後述する各国の比較でも必ず触れます。
投資永住権(ゴールデンビザ)とポイント制・収入証明型の違い
永住権の取得ルートは大きく3種類に分類できます。一つ目が投資または不動産購入を条件とする「投資永住権(ゴールデンビザ)」、二つ目がスキルや年収を審査するポイント制・収入証明型、三つ目が定住年数をクリアすることで自動的に申請資格が生まれる「長期居住型」です。
費用の構造が異なるのはこの分類に起因します。ゴールデンビザ型は投資額が大きい分、申請料は相対的に低く設定されている国が多い傾向にあります。一方でポイント制や長期居住型は申請料と弁護士費用が中心になるため、初期支出は抑えられますが取得までの期間が長くなるケースが多く、機会費用も考慮が必要です。
私自身がアジア移住を計画する上で検討しているのは主にゴールデンビザ型です。AFP・宅建士として資産設計の視点で考えると、投資額は別の資産クラスとして機能する可能性があり、純粋な「費用」として処理するよりも資産配分の一部として捉えたほうが判断がしやすいと考えているからです。
私がフィリピン・プレセール購入と富裕層相談で学んだコスト感覚
フィリピンのプレセールで実感した「表示価格以外のコスト」
私がマニラ新興エリアでプレセールコンドミニアムを購入した時、デベロッパーが提示した価格は物件本体の分割払い額のみでした。実際に支払った総額を計算すると、登記費用・印紙税・VAT相当額・管理組合への初回拠出金などが積み上がり、表示価格から約10〜13%上乗せになりました。
この経験は永住権の費用構造を理解する上でも直接役立っています。フィリピンの退職者向け永住権「SRRV(Special Resident Retiree’s Visa)」は、メインストリームプランで預託金2万ドル(約300万円台、為替次第)から申請でき、申請料は1,400ドル程度です。ただし現地移民コンサルタント報酬と渡航費を加えると、初年度の実費は50〜80万円程度の上積みが発生します。
なお、海外不動産への投資は日本の宅建業法の適用外となりますが、現地の法律・規制・外国人所有比率制限など、日本とは異なる法的枠組みが適用されます。現地の弁護士や信頼できるコンサルタントへの相談を前提に動くことを強くお勧めします。
保険代理店時代の富裕層相談が教えてくれた「隠れコストの本質」
大手生命保険会社を経て総合保険代理店で勤務していた5年間で、個人事業主や富裕層から「海外移住した場合の保険・税務・資産の扱い」について多くの相談を受けました。その中で繰り返し出てきたテーマが「想定外のコスト」です。
特に多かったのが、永住権取得後に発生する税務上のコストです。例えばマレーシアのMM2Hは過去に条件が大幅に引き上げられ、申請当初の試算が無意味になったケースがあります。また日本の居住者でなくなる場合には出国税(国外転出時課税)の問題が生じることがあり、株式・ETF・仮想通貨などを保有している方は取得前に必ず税理士と連携する必要があります。私自身も株式・ETF・米国REIT・暗号資産・銀地金を運用しているため、この問題は他人事ではありません。
保険代理店で学んだことのひとつは、「費用の議論は常に手取りベースで行う」という原則です。永住権取得費用も同様で、税引き後・為替調整後の実額で比較することが判断の精度を高めます。
7カ国の永住権取得費用:総コスト比較テーブルと読み方
投資永住権(ゴールデンビザ)系5カ国の実額
以下は2027年時点での情報をもとにした概算です。為替レートや制度変更により数値が変動する可能性がある点をご承知おきください。また各国の税務・法律は国によって大きく異なるため、最終判断の前に現地の専門家への相談を推奨します。
UAE(ドバイ)ゴールデンビザ:不動産投資200万AED(約8,000万円前後)以上が条件の10年ビザ。申請料は4,000〜6,000AED程度で、弁護士・エージェント費用を含めると実費で30〜50万円程度の付帯コストが発生します。投資対象の不動産が資産として機能する点がポイントです。
ポルトガルゴールデンビザ:2024年以降、不動産直接投資ルートが廃止され、ファンド投資(50万ユーロ以上、約8,500万円前後)が主要ルートに移行しています。申請料は5,000〜6,000ユーロ程度、弁護士費用は3,000〜8,000ユーロが相場感です。
マルタCBI(市民権投資プログラム):永住権ではなく市民権(パスポート)取得のプログラムで、寄付金・不動産賃貸・国債保有を合わせると総コストは70〜100万ユーロ(1.2億〜1.7億円前後)規模になります。コストは高いものの、EUパスポートの取得という点で需要があります。
グレナダCBI:カリブ海の小国で、15万ドル以上の政府ファンドへの寄付または22万ドル以上の不動産投資が条件です。申請料・デューデリジェンス費を含めた総コストは家族構成によりますが、単身で総額3,500〜5,000万円程度の試算が出てきます。
タイLTR(長期居住ビザ):厳密には永住権ではなく10年ビザですが、事実上の長期滞在が可能です。申請料は50,000バーツ(約20万円前後)で、資産要件は100万ドルの資産保有または年収8万ドル以上です。比較的シンプルな構造で費用の見通しが立てやすい点が特徴です。
収入証明・ポイント型2カ国と費用の考え方
マレーシアMM2H(改訂版):2021年の条件改定後、定期預金150万リンギット(約5,000万円前後)と月収証明4万リンギット(約130万円)が要件となりました。申請料は5,000リンギット程度ですが、総コストは預金拘束を含めると相当規模になります。2023年以降はさらに細分化されたカテゴリが設けられており、最新情報の確認が必須です。キプロス永住権と不動産投資|宅建士が35歳移住計画で検証した5観点
フィリピンSRRV:前述のとおり、預託金2万ドルから申請可能で7カ国中では相対的に参入ハードルが低い部類に入ります。ただしフィリピンは治安・インフラ・医療環境に地域差があり、生活コストの試算は居住エリアによって大きく変わります。私自身がオルティガスエリアでコンドミニアムを所有しているため、この地域の生活コスト感覚は実感として持っています。
7カ国を総コストで並べると、フィリピンSRRVが参入コスト面で比較的取り組みやすく、マルタCBIが最も大きなコスト規模という構図になります。ただしコストの低さと居住環境・パスポートの価値はトレードオフになるケースが多く、「費用だけで選ぶ」判断は避けることが重要です。
見落としやすい隠れ費用と失敗から学ぶ選定軸
取得後に発生する維持コストと最低滞在要件
永住権取得費用の議論で見落とされやすいのが、取得後の維持コストです。多くの国では一定日数以上の滞在義務や定期的な更新申請が求められます。例えばポルトガルのゴールデンビザは年間7日以上の滞在が条件とされており(制度変更の可能性あり)、渡航費・宿泊費の年間コストも試算に含める必要があります。
また永住権を保持したまま日本に居住し続ける場合、日本での税務上の取り扱いは原則として変わりません。日本の居住者として全世界所得が課税対象となるため、「永住権を取ったから税金が安くなる」という単純な話にはならない点を強調しておきます。出国税・恒久的施設認定・タックスリジデンシーの変更は、税理士・弁護士との連携なしに判断するべきではありません。
私が東京で法人を経営し、インバウンド民泊事業を運営しながら将来の海外移住を計画している理由の一つは、この税務的な準備期間を確保するためです。移住を「コスト」の文脈だけで語るのではなく、キャッシュフローと税務の両面で設計することが現実的な移住計画の出発点だと考えています。
選定軸を間違えると費用は2倍になる
保険代理店時代の相談事例の中で記憶に残っているのは、「低コストの永住権を取得したものの、現地での生活インフラが整わず結局日本居住を継続、維持費だけがかかり続けた」という事例です。費用比較は必要ですが、選定軸が「安さ」のみになると事後コストが膨らむリスクがあります。
私が実際に移住先として精査する際に使っている選定軸は4つです。①取得・維持の総コスト(5年分)、②現地での生活インフラと医療水準、③日本との往来のしやすさ(フライト本数・時間)、④日本側の税務・法務への影響度です。この4軸で評価すると、私の場合はドバイとフィリピン(オルティガス・BGC周辺)が有力な候補として残ります。ドバイ2026年最新動向|宅建士が移住計画で精査した7論点
なお、いずれの国に対しても「この国が正解」という断定はできません。個人の資産状況・家族構成・ビジネスの性質によって最適解は異なります。この記事はあくまで私個人の調査と経験をもとにした情報提供であり、最終的な意思決定には移民専門弁護士・税理士への相談を強く推奨します。
まとめ:永住権取得費用を正しく比較するための5つの原則とドバイ移住の検討
7カ国比較から導く費用精査の5原則
- 申請料だけでなく5項目合計で比較する:政府申請料・投資額・弁護士費用・準備費用・維持費用の合計が実際の永住権取得費用です。公式料金のみでの比較は判断を誤らせます。
- 投資額は「コスト」と「資産」を切り分けて考える:ゴールデンビザ型の投資額は資産として機能する可能性がある一方で、流動性リスクや為替リスクも伴います。純粋なコストとして処理せず、資産配分の文脈で評価することが重要です。
- 制度変更リスクを必ず織り込む:マレーシアMM2Hのように条件が大幅に変更された事例があります。取得時点の条件だけでなく、過去の変更履歴と政治的安定性も確認してください。
- 日本側の税務コストを必ず試算に加える:出国税・タックスリジデンシー変更・全世界所得課税の影響は、取得費用を大きく超えることがあります。移住前に必ず税理士と連携してください。
- 「安さ」より「費用対効果」で選ぶ:参入コストが低い国が最善とは限りません。現地インフラ・医療・日本との往来コスト・税務影響を加味した総合評価が、後悔しない選択につながります。
ドバイ移住・海外法人設立を具体的に検討するなら
私が現在、移住候補地として特に注目しているのがドバイです。UAEゴールデンビザは10年の長期ビザとして安定性が高く、法人設立との組み合わせで税務上の選択肢が広がる可能性があります。東京で法人を経営している私の立場から見ると、「海外法人の設立」と「居住ビザの取得」をセットで設計できる点がドバイの大きなメリットのひとつです。
ただし海外法人設立・移住計画は、日本の税務・法務との整合性を取りながら進める必要があります。AFP・宅建士として多くの事例を見てきた私が感じるのは、「費用の精査」と「専門家への相談」を同時並行で進めることが、移住計画をスムーズに前進させる上で有効だということです。
ドバイへの移住や海外法人設立を具体的に検討したい方は、まず専門のサポートサービスで情報収集することをお勧めします。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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