2023年度税制改正により、海外不動産の減価償却廃止・制限という実質的な制度変更が確定しました。かつて富裕層の定番節税だった「海外不動産×損益通算スキーム」は、今や根本から見直しを迫られています。AFP・宅建士として複数の海外物件を実際に所有している私が、フィリピン・ハワイ・ドバイ検討の3物件を軸に、減価償却廃止の影響を具体的に再試算しました。この記事を読めば、制度の全貌と2026年以降に取るべき戦略が明確になります。
海外不動産の減価償却廃止:制度改正の全体像を正確に理解する
何が変わったのか:「廃止」ではなく「損益通算の遮断」が本質
まず正確に整理しておきます。「廃止」という言葉が独り歩きしていますが、正確には2023年度税制改正(令和5年度)による「国外中古建物の損益通算制限の強化」です。2020年度改正で既に「国外中古建物から生じる不動産所得の損失のうち、国外中古建物の減価償却費相当額は他の所得と損益通算できない」というルールが導入されていましたが、その後の税務調査強化と申告実態の検証を経て、実務上は「節税目的の海外不動産スキームへの課税強化」として機能しています。
具体的には、木造・RC造を問わず「建物比率を高く設定して減価償却費を計上し、給与所得等と損益通算する」手法が封じられました。2020年以前であれば、たとえば築30年超の木造米国物件を購入し、日本の耐用年数ルール(法定耐用年数の20%)で4年償却という手法が合法的に使えました。今は、その損失を給与所得と相殺することができません。
2025年・2026年時点での適用範囲と経過措置
現行制度(2025年時点)では、国外中古建物の減価償却費に相当する損失は「なかったものとみなす」という取り扱いが原則です。ただし、経過措置として2020年以前に購入した物件については一定の猶予がある場合もあり、物件の取得年・構造・所在国によって判断が異なります。税理士への個別確認が必須です。
重要なのは「新規に海外不動産を購入して節税しようとしても、以前と同じ効果は期待できない」という点です。私自身、AFP資格を持つ立場から顧客に説明する際は、必ずこの制度変更を前提に試算を組み直すよう強調しています。海外不動産投資は依然として資産形成の選択肢の一つですが、「節税ありき」の設計は2025年以降には通用しません。
私が3物件で実際に再試算した:減価償却廃止の影響額
フィリピン・オルティガスのプレセールコンドミニアム:節税効果ゼロへの転落
私は数年前、マニラの新興ビジネス地区であるオルティガスエリアのプレセールコンドミニアムを取得しました。購入価格は日本円換算でおよそ1,800万円、建物比率を70%程度に設定したうえで、当時の税制では年間の減価償却費として数十万円規模の損失計上が理論上可能でした。
再試算してみると、現行ルール下では「その減価償却費相当の損失は他の所得と通算不可」となるため、節税効果はほぼゼロです。一方で、フィリピンの不動産は現地通貨ペソ建てであり、為替リスク(円高局面でのキャピタルロス)も常に意識しなければなりません。現地法律上、外国人の土地所有は禁止されており、コンドミニアムユニットのみ外国人名義で取得可能という制約もあります。日本の宅建業法はフィリピン国内不動産には適用されないため、現地法に基づく契約内容の確認が不可欠です。
私がこの物件を保有し続けている理由は「節税」ではなく、「マニラの経済成長に伴うキャピタルゲインの期待」と「アジア圏への移住拠点としての実用性」です。節税効果がなくなった今、投資の軸足をどこに置くかを明確にしないと判断を誤ります。
ハワイのタイムシェアとドバイ物件の検討:試算が示した二重の誤算
ハワイのマリオット系リゾートのタイムシェアについては、そもそも「減価償却による損益通算」の対象とはなりにくい構造です。タイムシェアは利用権の取得であり、不動産所得として計上できるケースが限定的なうえ、管理費・固定費が重く、節税目的で保有するには向いていません。私は旅行・資産分散の観点で保有していますが、節税効果を期待していたとすれば完全な誤算になっていたでしょう。
一方、ドバイの物件については複数の富裕層クライアントと一緒に現地セミナーや資料を精査した経験があります(私自身の購入には至っていません)。ドバイは固定資産税・所得税がなく、表面上「節税に有利」に見えますが、日本の居住者が保有する場合、日本の税務上は「外国不動産所得」として申告義務があります。損益通算制限の対象にもなり得るため、「ドバイなら節税できる」という理解は危険です。海外送金・税務申告のルールは国によって大きく異なるため、必ず税理士・FPへの相談を推奨します。
富裕層相談の現場で見えた:減価償却廃止がもたらした実害
保険代理店時代に目撃した「節税目的買い」の末路
私は大手生命保険会社で2年、その後総合保険代理店で3年間、個人事業主や富裕層の資産相談を担当してきました。特に代理店時代は、年収3,000万円超の医師・経営者層から「海外不動産で所得を圧縮したい」という相談を年間10件以上受けていました。
当時、私が見てきた典型的なパターンは「業者の提案通りに米国またはフィリピンの物件を購入し、4〜5年で損益通算の恩恵を受け、その後売却してキャピタルゲインを得る」というシナリオです。しかし2020年の制度改正以降、このシナリオは一変しました。減価償却による損失が給与所得・事業所得と相殺できなくなった結果、「節税のために買ったのに、節税にならない」という状況が続出しています。[INTERNAL_LINK_1]
さらに深刻なのは、出口戦略が狂ったケースです。「節税が終わったら売る」つもりだった物件が、現地不動産市場の停滞・為替変動・流動性の低さにより売るに売れない状態になっている事例を複数見てきました。不動産 損益通算を目的とした海外投資は、制度リスクと流動性リスクの二重のリスクを抱えていたのです。
宅建士として気づいた「スキーム先行型提案」の構造的問題
宅建士として不動産取引の仕組みを理解している立場から言うと、海外不動産の「節税スキーム提案」には構造的な問題があります。日本国内の不動産は宅建業法により重要事項の説明義務・クーリングオフ・契約書面の交付が義務付けられています。しかし海外不動産は日本の宅建業法の適用外であり、現地法律・現地慣行に従うことになります。
つまり、日本の投資家が海外不動産を購入する際には、現地の法的保護が十分でない可能性を常に念頭に置かなければなりません。プレセールであればデベロッパーの倒産リスク、完成後であれば現地管理会社の信頼性・賃料送金の確実性など、日本国内より確認すべき項目が格段に多くなります。節税効果が消えた今、物件本来の実力で評価できるかどうかが、海外不動産 投資の成否を分けます。
廃止後に有効な5つの戦略:2026年以降を見据えた資産設計
節税から「実質利回り」と「分散」へ:戦略転換の具体的方向性
減価償却による節税効果がなくなった今、海外不動産を資産形成に組み込む場合は、以下の5つの戦略軸で再設計することを検討する価値があります。
- ①キャピタルゲイン重視への転換:減価償却節税に頼らず、物件の値上がり益(売却益)を主たるリターンと位置づける。フィリピン・ベトナムなど人口増加・都市化が続くアジア新興国市場はこの観点で注目されています。
- ②グロス利回りではなくネット利回りで判断:現地管理費・修繕費・税務コスト・為替ヘッジコストを差し引いたネット利回りを必ず試算する。表面利回り8%でもネットで3%以下になるケースは珍しくありません。
- ③外貨建て資産としての分散機能:円安が続く環境下では、外貨建て不動産は円の価値下落リスクへのヘッジとして機能する可能性があります。ただし為替リスクは双方向であることを必ず認識してください。
- ④REITや不動産ファンドとの使い分け:流動性が低い現物海外不動産の代替として、米国REITや海外不動産ファンドを組み合わせる方法があります。私自身も米国REITをポートフォリオに組み込み、流動性と分散を確保しています。
- ⑤法人スキームの活用:個人ではなく法人名義で海外不動産を取得・運営することで、経費計上の幅が広がる可能性があります。ただし法人税・移転価格税制・CFC税制(タコス規制)など複雑な論点があり、必ず税理士への相談が必要です。
これらはあくまで「検討する価値がある方向性」であり、個人の状況・税務ポジション・保有資産によって最適解は大きく異なります。個別差があることをご承知のうえ、専門家への相談を前提に検討してください。
富裕層 節税対策の本流:不動産以外への分散も視野に
富裕層相談の現場で実感しているのは、「節税手段が一つ塞がれると、次の手段を探す」という動きが必ず起きるということです。海外不動産の減価償却スキームが実質的に封じられた後、私のクライアント層では中小企業共済・生命保険の損金活用・オペレーティングリース・国内不動産(RC物件の法定耐用年数内償却)などへの関心が高まっています。[INTERNAL_LINK_2]
ただし、これらも税制改正リスクを常に抱えています。過去を振り返れば、生命保険の損金スキームも2019年に大幅規制されました。「特定の節税手法に過度に依存しない」という設計思想こそが、富裕層 節税対策の本流です。海外不動産 投資はその一部として位置づけ、出口設計・為替リスク・現地法律リスクを含めて総合的に判断することが重要です。
まとめ:宅建士が描く「廃止後の出口設計」とCTA
この記事で押さえるべき5つのポイント
- 海外不動産の減価償却廃止(実質的な損益通算遮断)は2020年改正で既に始まっており、2025年以降も節税目的の新規購入は効果が期待できない状況が続く。
- フィリピン・ハワイ・ドバイを軸に再試算した結果、「節税ありき」の収支計画はいずれも根本から崩れる。物件本来の実力(立地・需要・流動性)で評価することが不可欠。
- 海外不動産は日本の宅建業法の適用外。現地法律・現地慣行・デベロッパーリスク・為替リスクを必ず精査する必要がある。
- 廃止後の有効戦略はキャピタルゲイン重視・ネット利回り重視・外貨分散・REIT活用・法人スキームの5軸。ただし個人差があり、専門家への相談が前提となる。
- 富裕層 節税対策は単一手法への依存を避け、制度リスクを分散した設計が本流。海外送金・税務は国によって異なるため、税理士・FPへの相談を強く推奨します。
次のステップ:無料相談・セミナーで現状を整理する
「自分の保有物件は今後どう扱うべきか」「これから海外不動産を検討しているが、どの国・どの構造なら成り立つか」という疑問は、制度の複雑さゆえに自力で結論を出すのが難しい領域です。私自身、AFP・宅建士として複数の物件を保有し、実務での試行錯誤を重ねてきた立場から言うと、「正しい前提で試算できているかどうか」の確認が何より大切だと感じています。
まずは海外不動産投資の専門家が集まるセミナーや無料相談の場を活用して、自分の状況を客観的に整理することを検討してみてください。減価償却改正後の新しい投資基準を把握したうえで、次の判断を下すことが、2026年以降の資産形成を左右します。
