ゴールデンビザの相場は「どの国か」「どの投資カテゴリか」によって20万ユーロから200万ディルハム超まで大きく開きます。AFP・宅建士として富裕層の資産相談を長年担当してきた私が、7カ国の投資額帯を地域別に整理し、予算ごとの現実的な選び方を実務視点で解説します。
ゴールデンビザ相場の全体像と2027年時点の水準
最低投資額の国別レンジ:20万ユーロから200万ディルハムまで
2027年時点で日本人富裕層が検討するゴールデンビザの投資額は、大きく分けて「欧州型」「中東型」「アジア型」の3ゾーンに集約されます。欧州型はポルトガル・ギリシャ・スペインが代表格で、ファンド出資型で最低25万ユーロ前後、不動産型になると50万ユーロを超えるケースが標準です。
中東型はUAE(ドバイ)が中心で、200万ディルハム(日本円換算で約8,000万円前後)相当の不動産保有が10年ゴールデンビザの目安です。アジア型はマレーシアのMM2Hやフィリピンのリタイアメントビザ系が知られますが、厳密な「ゴールデンビザ」制度とは別枠となります。
重要なのは、これらの金額はあくまで「取得要件の入口」であって、諸費用・弁護士費用・管理コストを含めた実質予算は要件額の1.1〜1.3倍程度を見ておく必要があることです。為替変動リスクも常に伴うため、円建てで計画を立てる際は余裕資金の確保が前提となります。
投資カテゴリ別の相場構造:不動産・ファンド・国債の3系統
ゴールデンビザの投資カテゴリは大別すると「不動産取得型」「ファンド・株式出資型」「国債・預託金型」の3系統です。国別比較をする際、同じ国でも選ぶカテゴリによって投資額が倍近く異なることがあります。
たとえばポルトガルは2023年の制度改正後、リスボン・ポルトの都市部不動産がゴールデンビザの対象外となりました。現在は内陸部・島嶼部の不動産か、認定ファンドへの50万ユーロ以上の出資が主な選択肢です。ファンド型は不動産型と比べて管理負担が軽い反面、流動性リスクと運用実績の確認が欠かせません。
ギリシャは2023年以降、アテネ中心部・サントリーニ・ミコノスなど人気エリアの不動産取得要件が80万ユーロに引き上げられました。一方、その他エリアは25万ユーロラインが維持されており、同国内でも地域差が顕著です。こうした価格推移を把握せずに予算を組むと、申請段階で要件を満たせないリスクがあります。
保険代理店時代の富裕層相談と私のフィリピン購入経験
総合保険代理店で見た「ゴールデンビザ予算」の実態
私は大手生命保険会社に2年、総合保険代理店に3年勤務した経験があります。個人事業主や資産1億円以上の富裕層の相談を多数担当した中で、「海外移住の選択肢としてゴールデンビザを検討したい」という相談は2020年以降、明らかに増えました。
当時の相談者層に多かったのは、「国内不動産の収益性が落ちてきたので、海外に分散したい」「子どもを海外で教育させるための居住権が欲しい」という動機を持つ方々です。予算感としては、3,000万〜8,000万円を海外資産に振り向けられる層が検討に入るイメージで、それ以下の層は「まずは国内REITや米国ETFで基盤を作る」フェーズにある方が多かったです。
ゴールデンビザの話題が出た時に私が必ず確認したのは、「現地の税務・法務を扱える専門家がいるか」という点です。日本の宅建業法は国内不動産取引を規律するものであり、海外不動産の取引には適用されません。現地の法律・規制・税制に精通した弁護士・会計士との連携なしに進めることは、私自身が強くお勧めしない姿勢を一貫して取ってきました。
フィリピン・オルティガスのプレセール購入で学んだこと
私自身はマニラの新興エリア・オルティガスでプレセールコンドミニアムを購入しています。取得価格は日本円換算で約500万〜600万円帯で、これはフィリピンの居住ビザ取得要件(リタイアメントビザ系)とは別の純粋な不動産投資として購入しました。
フィリピンのプレセールは、竣工前に予約購入することで価格が抑えられる仕組みです。私が契約した時点では、周辺の竣工済み物件と比べて15〜20%程度低い単価で入れた感覚がありました。ただし竣工リスク・デベロッパーリスク・為替リスク(フィリピンペソ建て)が複合的に存在するため、「値上がりが見込まれる」という期待だけで動くのは危険です。
この経験から言えるのは、ゴールデンビザ目的で海外不動産を購入する場合、「ビザ要件を満たす物件」と「資産価値として成立する物件」が必ずしも一致しないということです。要件金額をギリギリ満たすだけの物件を選ぶと、ビザは取れても資産として機能しない可能性があります。投資額と資産価値の両面を精査することが重要です。
国別比較で見るゴールデンビザ不動産の地域差5パターン
欧州3カ国(ポルトガル・ギリシャ・スペイン)の投資額帯
欧州ゴールデンビザの中でも選好されやすい3カ国を整理します。ポルトガルは認定ファンド出資が50万ユーロ〜、内陸部・島嶼部の不動産が50万ユーロ〜となっており、都市部不動産の制度外化後は実質的に「不動産型は地方物件」というルールが定着しています。
ギリシャは前述のとおり地域によって25万ユーロと80万ユーロに二分されており、2024〜2025年の価格推移を見ると、80万ユーロ要件エリアのアテネ都心部は物件価格自体も上昇傾向にあります。スペインは2024年に不動産型ゴールデンビザの廃止を発表しており、代替手段としてファンド出資(100万ユーロ〜)や国債購入(200万ユーロ〜)にシフトしています。キプロス永住権と不動産投資|宅建士が35歳移住計画で検証した5観点
欧州3カ国の共通点として、EU域内の移動の自由(シェンゲン協定)を享受できる点が挙げられます。これはドバイや東南アジアにはない優位性であり、子弟の欧州留学・EU圏でのビジネス展開を視野に入れる方には検討する価値があります。ただし各国の税務居住者ルールや相続税制は日本と大きく異なるため、必ず現地税務専門家への相談を推奨します。
中東・アジア2カ国(UAE・マレーシア)の投資額帯と特徴
UAEのゴールデンビザは10年有効で、200万ディルハム以上の不動産を保有する方が対象です。2024〜2025年にかけてドバイの不動産価格が上昇しているため、200万ディルハム(約8,000万〜9,000万円相当)は以前より手の届きやすい物件が限定的になってきている側面があります。
一方でドバイの魅力は、個人所得税・キャピタルゲイン税がない税制環境です。ただし日本の居住者のままであれば日本の税法が優先適用されるため、「ドバイに法人を持てば日本の税金がゼロになる」という誤解は危険です。海外送金・税務の取り扱いは国によって異なり、個人の居住ステータスによっても変わるため、必ず税理士・弁護士への相談が必要です。
マレーシアのMM2H(マレーシア・マイ・セカンドホーム)は厳密にはゴールデンビザとは別枠ですが、長期滞在ビザとして富裕層に人気があります。2021年の制度改正後、要件が大幅に引き上げられ(預金残高150万リンギット相当・月収収入要件等)、以前より審査が厳格化しています。コスト感は欧州型ゴールデンビザより低めですが、居住権の性質が異なる点に注意が必要です。
相場変動の3要因と今後の価格推移の読み方
政策変更・不動産市況・為替が相場を動かす構造
ゴールデンビザの相場が変動する要因は大きく3つあります。第一に「政策変更」です。スペインの不動産型廃止、ポルトガルの都市部除外、ギリシャの要件引き上げが示すように、欧州各国は国内住宅市場の過熱を抑制する目的で制度を随時見直しています。一度決めた予算が翌年には要件を満たさなくなるリスクは常にあります。
第二に「現地不動産市況」です。ゴールデンビザの最低取得要件額は法律で定められていますが、実際に市場で流通している物件価格は需給によって変動します。アテネ中心部やドバイのダウンタウンエリアは2022年以降、価格上昇が顕著で、要件ギリギリの物件を探すのが難しくなってきています。
第三に「為替」です。ユーロ建て・ディルハム建ての投資額を円建てで換算すると、円安局面では実質コストが大幅に膨らみます。2022〜2024年にかけての円安進行は、日本人投資家にとって欧州・中東ゴールデンビザのハードルを実質的に2〜3割押し上げた計算になります。為替ヘッジ手段は限定的であるため、タイミングと外貨資産のバランスを慎重に考える必要があります。
2025〜2027年に向けた価格推移の注視ポイント
2025〜2027年に向けて特に注目すべき動きは、EU全体でのゴールデンビザ規制強化の議論です。欧州議会では「第三国富裕層への居住権売却」に対する批判的な議論が続いており、複数国が制度縮小・廃止に動く可能性があります。現在検討中の方にとっては、「早めに動く」ことが価格推移の観点でも選択肢の幅を広げる可能性があります。ドバイ2026年最新動向|宅建士が移住計画で精査した7論点
ドバイについては、エキスポ2020以降も経済成長が続いており、不動産需要は旺盛です。ただし供給過剰局面での価格調整リスクも過去に経験しており、短期的な値上がり期待だけで判断することは慎重であるべきです。私自身がハワイのリゾート系不動産で管理会社と交渉した経験から実感しているのは、「不動産は保有コストと出口戦略を最初に設計する」ことの重要性です。取得価格だけでなく、年間維持費・売却時の税務処理・現地法規制を含めた総コストで考えることが前提です。
まとめ:予算別ゴールデンビザの選び方と次のアクション
予算帯別の現実的な選択肢一覧
- 3,000万〜5,000万円帯:ギリシャの地方・島嶼部(25万ユーロ〜)が現実的な選択肢。ただし円安水準次第で実質コストが変動するため、外貨準備の状況を確認してから動くことが重要です。
- 5,000万〜8,000万円帯:ポルトガルのファンド型(50万ユーロ〜)またはギリシャの都市部(80万ユーロ〜)が検討圏内。不動産型かファンド型かで流動性・管理負担が大きく異なります。
- 8,000万円〜1億円超帯:ドバイのゴールデンビザ(200万ディルハム〜)が視野に入る。税制メリットを享受するには日本の居住ステータスの変更が前提となるため、税務専門家との事前協議が必須です。
- 共通の注意点:ゴールデンビザはあくまで「居住権」の取得であり、市民権・パスポート取得とは別です。制度の永続性・更新要件・家族帯同条件も国によって異なるため、最新情報の確認を怠らないことが前提です。
- 専門家相談は必須:現地弁護士・税理士・日本の税務専門家の3者体制で進めることが、後悔のない意思決定につながります。個人差がありますが、準備期間は申請から取得まで6ヶ月〜1年以上を見ておくことが現実的です。
ドバイ・海外法人設立を視野に入れるなら最初の相談窓口を確保する
私自身、将来的なアジア圏への海外移住を計画する中で、ドバイを含む中東の法人設立・居住権スキームを継続的に調査しています。AFP・宅建士として言えるのは、「相場感を把握してから動く」ことと「信頼できる相談窓口を先に確保する」ことが、失敗を避ける上で特に重要な2点だということです。
ゴールデンビザを単体で考えるのではなく、海外法人設立・資産分散・将来の居住計画をセットで設計することで、投資額の意味が変わってきます。ドバイへの移住や海外法人設立を検討している方は、まず専門のサポート窓口で現状を整理することを推奨します。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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