AFP・宅建士として富裕層の資産相談を担当してきた私が、ゴールデンビザの選び方について正直に話します。「とりあえずポルトガル」「UAEが節税になる」という断片情報だけで動こうとしているなら、一度立ち止まってください。国ごとに投資要件・税制・居住義務は大きく異なり、自分のライフプランと照合せずに選ぶと、後から取り返しのつかないコストが発生します。この記事では5カ国を7つの判断軸で比較し、私自身の海外資産形成の実体験も交えながら解説します。
ゴールデンビザ選びを左右する7つの判断軸とは
判断軸①〜④:投資額・税制・居住要件・家族帯同
ゴールデンビザを選ぶ際、まず確認すべき判断軸は大きく4つあります。①最低投資額、②課税ルールと税制優遇の有無、③年間滞在義務の日数、④配偶者・子の帯同条件です。
①の投資額は国ごとに差が激しく、ギリシャは不動産購入で25万ユーロ(一部エリアは50万ユーロに引き上げ)から取得できるのに対し、マルタは帰化を目指す場合に60万〜75万ユーロ超の寄付・不動産賃借・投資を組み合わせる必要があります。予算規模が合わない国を候補に入れても意味がありません。
②の税制は、UAE(ドバイ)が個人所得税・キャピタルゲイン税ゼロという点で特に注目されます。ただし日本の居住者のままではCRS(共通報告基準)により日本当局に口座情報が共有されるため、節税効果を得るには実態を伴った居住移転が前提です。この点を理解せずに「ドバイで節税できる」と動いてしまう方が後を絶ちません。
③④については次のH3で掘り下げます。居住義務を甘く見ると、ビザ失効・市民権取得の遅延という形でペナルティが返ってくるからです。
判断軸⑤〜⑦:出口戦略・パスポートの強さ・言語・生活環境
⑤出口戦略とは、取得した投資不動産や金融資産をいつ・どのように売却・回収するかの計画です。ゴールデンビザの申請要件として「一定期間の資産保有義務」が設けられているケースが多く、早期売却するとビザが失効します。ポルトガルは永住権取得後5年経過で市民権申請が可能ですが、その間は対象資産を維持し続ける必要があります。
⑥パスポートの強さは見落とされがちな軸です。マルタ市民権はEUパスポートとして180カ国以上へのビザなし渡航が可能で、資産家層には根強い需要があります。一方、UAEのゴールデンビザはEU圏への渡航時にビザ取得が必要なケースもあるため、ビジネス上の渡航先が多いほど別途検討が必要です。
⑦言語・生活環境は、家族帯同を考えるなら特に重要な軸です。英語が通じる環境、インターナショナルスクールの数、医療水準は国ごとに異なります。UAE(ドバイ)は英語が広く通じ、インターナショナルスクールも充実していますが、年間の学費が100万円を超えるケースも珍しくありません。生活コスト全体を試算した上で判断することを推奨します。
5カ国の投資額と最低条件を徹底比較
ポルトガル・ギリシャ・スペイン:EU圏3カ国の違い
EU圏のゴールデンビザ比較でよく挙がるのがポルトガル・ギリシャ・スペインの3カ国です。それぞれの2024〜2025年時点の状況を整理します。
ポルトガルゴールデンビザは2023年の制度変更で不動産投資ルートが廃止され、現在は投資ファンドや企業投資(50万ユーロ〜)、文化遺産への寄付(25万ユーロ〜)などが主要ルートになっています。リスボン・ポルトの不動産に投資してビザを取るという従来のスキームは使えなくなりました。この変更を知らずに相談に来た方を、私は保険代理店時代に何人か見ています。
ギリシャゴールデンビザは不動産購入ルートが健在で、アテネ中心部や観光地エリアは50万ユーロ、その他エリアは25万ユーロが下限です。ただし2024年以降、一部エリアで引き上げが行われており、最新情報は現地弁護士への確認が不可欠です。スペインは2024年に不動産ルートの廃止を発表しており、現在は資本投資(200万ユーロ以上)や創業ビザが主流となっています。
UAE・マルタ:非EU圏で異なる価値軸
UAEゴールデンビザは投資額200万ディルハム(約8,000万円、1ディルハム≒40円換算)以上の不動産購入か、事業投資・スキルビザによる取得が代表的なルートです。居住義務は実質的に6ヶ月以内の不在を繰り返さなければよい、という比較的緩やかな運用がされています。
ただし、UAE側では個人所得税・キャピタルゲイン税がゼロでも、日本の税法上の居住者を脱するには183日以上の実態ある滞在が必要です。「書類上だけドバイに住所を移した」という状態では、日本の課税から逃れられないどころか、税務調査のリスクが高まります。私は現在、アジア圏への海外移住を計画しており、この点は自分自身のシミュレーションでも繰り返し検討しています。専門家への相談は不可欠です。
マルタの市民権プログラム(MEIN)は投資移住というより「市民権購入」に近い性格で、最低でも60万〜75万ユーロ超の寄付・賃貸・投資の組み合わせが必要です。取得後はEUパスポートを得られるため、資産規模が大きく国際的な活動基盤を持つ方には検討の価値があります。個人差が大きい選択肢であることも付け加えておきます。
税制優遇とCRS対応の盲点
CRSで「隠れる」時代は終わった
2017年以降、CRS(共通報告基準)の本格運用が始まり、加盟国間では非居住者の金融口座情報が自動的に居住地国の税務当局へ共有されます。2025年現在、参加国・地域は110を超えており、ゴールデンビザを取得してその国に口座を開設しても、日本の居住者である限り口座情報は日本の国税庁に届きます。
「海外口座を持てば税金を逃れられる」という発想は、AFP・宅建士の立場から言うと現実から大きくかけ離れています。口座情報の開示義務(国外財産調書・財産債務調書)を怠ると、加算税・延滞税のリスクが伴います。ゴールデンビザの取得と税務申告は必ずセットで考えてください。キプロス永住権と不動産投資|宅建士が35歳移住計画で検証した5観点
ポルトガルのNHR制度とその変更点
ポルトガルには「非習慣的居住者(NHR)」という税制優遇制度があり、一時期は外国源泉所得が非課税になるとして富裕層の移住先として人気を集めました。しかし2024年以降、この制度は廃止され「IFICI」という新制度(IT・研究・スタートアップ従事者向け)に切り替わっています。
旧NHR制度を前提にポルトガル移住を検討していた方は、制度が変わったことで前提条件が大きく変わっています。課税ルールは国によって異なり、また年々改正されるため、移住・投資の意思決定前には必ず現地の税務弁護士・会計士への相談を強く推奨します。私自身もフィリピンでプレセールコンドミニアムを購入した際、現地税務の確認なしに動かなかったことが結果として大きなトラブル回避につながりました。
家族帯同と滞在義務の落とし穴――保険代理店時代の相談実録
「家族全員分のビザ」を想定していなかった事例
総合保険代理店に勤めていた頃、富裕層の個人事業主から「海外移住で資産を守りたい」という相談を受けることが多くありました。その中で繰り返し見た失敗パターンが「自分のビザは取れたが、子のビザ取得条件を確認していなかった」というケースです。
国によっては、18歳以上の子は扶養家族としての帯同対象外になる場合があります。また、配偶者帯同が認められていても追加費用・追加書類が必要なケースも多く、家族の人数・年齢構成によって総コストは大幅に変わります。ギリシャやポルトガルは配偶者・未成年の子の帯同が比較的柔軟ですが、UAEは2024年時点でビザの種類によって帯同できる扶養家族の範囲が異なります。
年間滞在義務日数の「実態」と日本ビジネスの両立
ゴールデンビザの滞在義務は、制度上の最低日数と実態の間にギャップがあります。ポルトガルは年間7日以上の滞在が義務とされており、EU圏のビザとしては滞在要件が比較的緩やかです。一方、マルタ市民権は取得後も居住実態の審査が続くとされており、書類上だけの居住は認められません。
私が現在、アジア圏への移住を具体的に検討しているのも、東京で法人・民泊事業を運営しながら「年何日現地に滞在できるか」というリアルな制約を自分自身で試算しているからです。日本側の事業・家族・税務申告と、移住先の滞在義務を同時に満たすスケジュール設計は、移住前に必ずシミュレーションしておくことが重要です。ドバイ2026年最新動向|宅建士が移住計画で精査した7論点
まとめ:ゴールデンビザの選び方と次のアクション
5カ国×7軸の比較まとめ
- ポルトガル:不動産ルートは廃止。ファンド・企業投資ルートで50万ユーロ〜。NHR制度終了でIFICI新制度へ移行。年間7日滞在。市民権は5年後に申請可。
- ギリシャ:不動産ルート健在(25万〜50万ユーロ)。居住義務が事実上ゆるやかで、EU域内移動の自由がある。エリアによって投資下限が異なる。
- スペイン:不動産ルート廃止。資本投資200万ユーロ以上が主流。家族帯同は柔軟だが投資ハードルが高い。
- UAE(ドバイ):所得税・キャピタルゲイン税ゼロだが、日本税務上の居住移転が必須。不動産200万ディルハム〜。英語環境・インフラ充実。
- マルタ:EU市民権取得が目標なら有力な候補。60万〜75万ユーロ超の総コスト。国際的な資産・ビジネス拠点を持つ層向け。
ゴールデンビザ選びを進める前にやるべきこと
ゴールデンビザの選び方で外してはいけない結論は、「自分のライフプラン・資産規模・日本の税務申告義務」を整理してから国を選ぶ、という順序です。国のブランドイメージや「節税できる」という断片情報から逆算して選ぶと、想定外のコストとリスクが発生します。
私がフィリピンでプレセールコンドミニアムを購入した際も、ハワイでタイムシェアを取得した際も、現地の法律・税務・出口戦略を事前に専門家と確認した上で意思決定しました。海外不動産は日本の宅建業法とは異なる法体系が適用されるため、日本の不動産常識をそのまま当てはめることはできません。これは宅建士として特に強調したい点です。
UAE(ドバイ)での法人設立・移住サポートを検討しているなら、まず専門サービスで概要を確認することから始めてください。海外送金・税務については国によって異なるルールが適用されるため、個別の専門家相談を必ず併用してください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
本記事のリンクはアフィリエイトリンクを含みます。
