フィリピン プレセール 体験談を探しているなら、成功談よりも「誤算の記録」の方が役に立つと私は確信しています。宅建士・AFPとして国内外の不動産に携わってきた私、Christopherが、フィリピン・オルティガスで約3,500万円のプレセールコンドミニアムを購入した際に直面したリアルな失敗と学びを、包み隠さず公開します。
フィリピン プレセール 体験談:購入を決めた本当の理由
「安く仕込む」という発想が起点だった
私がフィリピン・オルティガスのプレセール物件に興味を持ったのは、2021年のことです。当時、大手生命保険会社・総合保険代理店時代に担当してきた富裕層クライアントの多くが「アジア不動産でポートフォリオを分散している」と話していて、私自身もその必要性を肌で感じていました。
プレセールとは、建物が完成する前の段階で予約購入する仕組みです。フィリピンでは完成3〜5年前に販売が始まり、完成時には市場価格が上昇している可能性が高いとされています。実際、私が購入したオルティガスエリアのプロジェクトは、当時の販売価格が1ベッドルームで約900万ペソ(当時のレートで約2,000万円前後)から始まっており、周辺の完成済み物件と比較すると2〜3割ほど割安な水準でした。
ただし、ここで私が最初に理解できていなかったことがあります。「割安」という数字はあくまで比較論に過ぎず、完成時の市場価格を誰も保証していないという事実です。プレセール投資は「収益が見込まれる」選択肢の一つではありますが、確実な値上がりを約束するものでは決してありません。
宅建士として痛感した「日本の常識は通用しない」現実
私は宅地建物取引士として日本の不動産取引に精通していますが、フィリピンの不動産購入プロセスは法体系が根本的に異なります。まず、フィリピンでは外国人(外国法人を含む)がコンドミニアムの区分所有権を取得できる一方で、土地の所有は原則として禁止されています。これはフィリピン共和国法(Condominium Act)に基づく制限であり、日本の区分所有法とは前提が大きく違います。
日本の宅建業では売買契約前に重要事項の説明義務が課せられますが、海外不動産取引にはその義務は適用されません。現地デベロッパーとの契約内容はすべて英語・フィリピン語で記載されており、私自身が契約書を精読するだけでも相当な時間を要しました。「宅建士だから大丈夫」という過信が、後述する誤算の温床になったと今では思っています。
オルティガス物件の購入価格と支払い内訳【実数公開】
総額約3,500万円の内訳はこうなっていた
私が購入した物件は、マニラ首都圏・オルティガスセンターに近い新興エリアに建設中のプロジェクトです。専有面積は約40㎡の1ベッドルームユニットで、購入価格は約1,600万ペソ。契約締結時点のフィリピンペソ/円レートをおよそ2.2円で換算すると、日本円で約3,500万円という水準です。
支払いスケジュールはプレセール特有の分割払いが組まれており、契約時に総額の約10%(約160万ペソ)を頭金として支払い、その後完成予定の2029年まで毎月均等払いが続く構造です。残額の約40%を月次分割、残り50%を完成時一括払いまたはバンクローンで清算する予定です。このプログレッシブペイメント方式はフィリピンのプレセールでは一般的ですが、日本の住宅ローンとはまったく異なる仕組みなので注意が必要です。
なお、購入価格に加えてVAT(付加価値税・12%)、印紙税、移転登記費用などが別途発生します。私の場合、これらの諸費用を合計すると購入価格のおよそ8〜10%が上乗せされる計算でした。事前の資金計画には必ずこの「隠れコスト」を織り込んでください。
為替レートの前提が崩れた時の衝撃
私が契約を締結した2022年初頭、フィリピンペソ/円レートはおよそ2.2〜2.3円で推移していました。しかし2022年後半から円安が急速に進み、一時的にペソ円レートが2.6〜2.7円台に達する局面がありました。毎月の分割払いは一定額のペソ建てなので、円換算すると支払い額が当初計画より1割以上増加するという事態が発生したのです。
海外不動産への投資では為替リスクは避けられません。「現地通貨建ての支払い×円安局面」が重なると、想定収益どころか資金計画そのものが狂います。私は現在、一部を外貨建て資産(米ドルETFなど)でヘッジするアプローチを取っていますが、完全にリスクを排除することはできていません。海外不動産を検討する際は、為替変動を前提としたストレステストを必ず行うべきです。
契約時に直面した3つの誤算【フィリピン不動産投資の落とし穴】
誤算①「キャンセルポリシー」と「デベロッパーの変更権」
プレセール契約で最初に驚いたのは、デベロッパー側に「設計変更・フロアプランの変更・完成時期の延長」を一定範囲で認める条項が契約書に盛り込まれていた点です。私が契約したユニットも、途中で共用施設の仕様が一部変更されるという通知が届きました。日本の売買契約であれば買主保護の観点から厳しく制限される内容ですが、フィリピンの契約ではこうした条項が標準的に含まれていることが多いのです。
また、購入者側のキャンセルルールも日本とは大きく異なります。フィリピンでは「Maceda Law(共和国法6552号)」と呼ばれる割賦販売保護法があり、一定の支払い実績があれば買主は一定の返金を受けてキャンセルできる権利が認められています。ただし、返金額は支払済み総額の50〜90%にとどまるケースが多く、全額戻ってくるわけではありません。契約前にこの法律の内容を理解しておくことは必須です。
誤算②「送金手続き」と「PAIBAN(AMLC)書類」の煩雑さ
日本からフィリピンへの送金は、金融庁の外為法規制・フィリピン中央銀行(BSP)の規制・現地デベロッパーの指定口座への手続きが重なり、想像以上に時間と手間がかかりました。私の場合、初回送金時に銀行から追加の資金使途証明書類を求められ、送金完了まで約2週間かかりました。
さらに、フィリピン側ではAMLC(マネーロンダリング対策委員会)の規制により、一定金額以上の送金には受取側でも書類確認が必要になります。デベロッパー担当者とのやり取りはすべてメール・英語対応で、日本語サポートが手薄なプロジェクトだったため、私は英語での交渉を余儀なくされました。海外不動産の購入手順を考える際、送金の実務は事前に銀行の担当者に確認しておくことを強くお勧めします。セブ島不動産投資の失敗例|宅建士が見抜いた5つの罠
為替と送金で苦労した実体験【宅建士でも想定外だった】
誤算③ペソ安・円安のダブルパンチ
2023年以降、私の物件の評価額をペソ建てで見るとおおむね横ばい〜やや上昇傾向にあります。ところが円ベースで考えると、円安の影響でペソ建て評価額を円換算した数値は当初想定より膨らんでいます。一見「プラス」に見えますが、これは円の購買力が下がっているだけであり、実質的なリターンとは言えません。
私はAFP(日本FP協会認定)として資産設計の相談を行ってきた経験から、海外資産の「評価額」と「実質リターン」を混同しないことの重要性を痛感しています。外貨建て資産の損益は、必ず「円換算後の手取り額」で判断してください。為替ヘッジコストも含めた実質利回りを計算する癖をつけることが、海外不動産投資家として最低限必要なスキルです。
誤算④「完成後の管理費・修繕積立金」が想定外に高かった
フィリピンのコンドミニアムは完成後、管理組合(HOA:Homeowners Association)に月額の管理費を支払う義務があります。私の物件の場合、1㎡あたり約100〜120ペソ/月の管理費が見込まれており、40㎡換算で月額4,000〜4,800ペソ(円換算で約9,000〜11,000円前後)です。プレセール時の説明資料には概算値しか記載されておらず、完成後の実額は竣工時まで確定しないという点を見落としていました。
さらに、フィリピンでは賃貸に出す場合、所得税(通常20%前後の源泉徴収)やBIR(内国歳入庁)への申告義務が発生します。日本国内でも海外源泉所得は確定申告で申告が必要です。税務処理は国によって異なるため、必ず現地の税理士と日本の国際税務に精通した専門家の両方に相談することを推奨します。ドバイ ゴールデンビザ取得条件2026|宅建士が調べた7要件と必要資金
これから検討する人への教訓:5つの誤算を糧にした「事前確認リスト」
プレセール購入前に必ず押さえるべき5つのポイント
- 誤算①【契約条項】:デベロッパーの「設計変更権」「完成延期条項」を契約書で必ず確認する。Maceda Lawのキャンセル返金ルールも把握しておく。
- 誤算②【送金手続き】:初回送金前に取引銀行の外為担当者へ相談し、必要書類・所要期間を事前確認する。フィリピン側のAMLC規制も把握する。
- 誤算③【為替リスク】:ペソ円レートの過去5年の変動幅(約±15〜20%)を前提にストレステストを行い、最悪ケースでも資金計画が破綻しないか確認する。
- 誤算④【管理費・税務】:完成後の管理費概算をデベロッパーに書面で確認する。フィリピン・日本双方の課税ルールを専門家に相談しておく。
- 誤算⑤【出口戦略】:プレセール期間中の転売(アサイン売り)が可能かどうか、デベロッパーの規約を確認する。流動性リスクを正しく理解した上で購入判断をする。
海外不動産に踏み出す前に「小さく試す」選択肢も検討価値がある
私はフィリピンのプレセールを通じて、海外不動産投資には独自のリスクと手間が伴うことを身をもって学びました。為替リスク、現地法律の複雑さ、送金の煩雑さ、管理コスト——これらはすべて、日本の不動産投資では体験しない「追加コスト」です。個人差はありますが、初めて海外資産に触れる方にとっては、いきなり数千万円規模の物件購入に踏み切るのは資金的・精神的に負荷が大きいと感じる方も多いはずです。
そうした方に検討する価値があると私が考えるのが、不動産投資クラウドファンディングです。1万円単位から不動産案件に分散投資できるため、海外不動産に資金を集中させるリスクを分散しながら、不動産投資の仕組みを学ぶ入口として活用できます。もちろん元本保証ではなく、運営会社リスク・案件リスクは存在しますが、リスクを抑えながら不動産投資の感覚をつかむ手段の一つとして検討に値します。専門家への相談も併せて行うことを強くお勧めします。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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