コンドミニアム シミュレーション|宅建士が3500万物件で検証した7項目

AFP・宅地建物取引士として、フィリピン・オルティガスのプレセールコンドミニアムを実際に保有している立場から、コンドミニアム シミュレーションの現実を公開します。ネットに出回る「利回り8%」という数字は、管理費・為替・空室を無視した机上の空論です。今回は購入価格約3,500万円の物件を例に、見落としがちな7項目を順番に検証していきます。

海外コンドミニアム試算の前提条件を整理する

「表面利回り」だけで判断してはいけない理由

コンドミニアムのシミュレーションで多くの投資家がつまずくのは、表面利回りと実質利回りの差を軽視している点です。表面利回りとは「年間家賃収入÷物件価格×100」という単純計算ですが、これには管理費・固定資産税相当の現地税・空室損失・送金コストが一切含まれていません。

フィリピンの場合、2024年時点で外国人がコンドミニアムを購入できる上限は建物全体の40%以内という所有制限があります。この「コンドミニアム法(RA4726)」は日本の区分所有法とは制度設計が異なり、宅建業法の保護が一切及ばない点を先に理解しておく必要があります。

私は宅建士として国内取引にも関わっていますが、海外不動産は日本の宅建業法の管轄外です。現地の法制度と日本のルールを混同しないことが、正確な試算の出発点になります。

試算に使う物件スペックの設定

今回の検証で使うモデルは以下の通りです。実際に私が保有するオルティガスエリアの物件に近い条件を設定しています。

  • 購入価格:約3,500万円相当(フィリピンペソ建て、為替1ペソ=2.5円で換算)
  • 面積:約40㎡、1LDKタイプ
  • 購入形態:プレセール(建設前契約)、竣工まで約3年
  • 想定賃料:月額5万〜6万円相当(現地USD建て)
  • 管理費:月額約1万5,000円相当

プレセールの場合、購入から竣工までの期間は賃料収入がゼロです。この「無収益期間」を試算に組み込まない計画書は信頼性に欠けると私は判断しています。

フィリピンプレセール購入時の実体験:試算と現実のギャップ

購入を決めた時に見ていた数字と、見ていなかった数字

私がオルティガスのプレセール物件を契約した時、最初にデベロッパーから提示されたシミュレーションシートには「表面利回り7.2%」という数字が並んでいました。当時、私はすでにAFPの資格を持ち、保険代理店で富裕層の資産相談を担当していたにもかかわらず、その数字を最初は額面通りに受け取りそうになりました。

実際に自分でエクセルを組み直すと、管理費・修繕積立・現地の源泉税(賃料の5%)・送金手数料を引いた実質利回りは4.8%前後に落ちました。さらに空室率を10%と想定すると、約4.3%まで下がります。「7%」と「4%」では資産形成の計画が根本から変わります。

この経験が、今回の7項目チェックリストを作るきっかけになりました。シミュレーションは「楽観シナリオ」「標準シナリオ」「悲観シナリオ」の3本立てで作ることを、今では必ず資産相談の現場でもお伝えしています。

プレセール特有のキャッシュフロー問題

プレセール契約では、竣工前に分割払いでデベロッパーに支払いを続けます。私の物件では、契約から竣工まで約36ヶ月、その間は毎月一定額を支払いながら賃料収入はゼロという状態が続きました。

日本の不動産投資の感覚では「ローンを組んで家賃で返済」というモデルが一般的ですが、フィリピンのプレセールは現金分割払いが主流で、現地でのモーゲージローン金利は年率8〜12%程度と非常に高水準です。この資金拘束コストを試算に入れないと、手元キャッシュフローが著しく悪化します。

私の場合、この期間の機会コストも含めると、実質的な投資効率は当初計画より低くなりました。ただし、プレセール価格は竣工後の市場価格より15〜25%程度低い水準で設定される場合が多く、キャピタルゲインの可能性も見込まれます。あくまで可能性であり、保証ではありません。

家賃利回り・管理費・為替:3つの数字を同時に動かす

利回り計算の実践:3シナリオで試算する

今回のモデル物件(購入価格約3,500万円)で3シナリオを比較します。

  • 楽観シナリオ:月賃料6万円、空室率5%、管理費1.5万円/月 → 年間実質収入約51万円 → 実質利回り約1.46%(購入諸費用含む)
  • 標準シナリオ:月賃料5万円、空室率10%、管理費1.5万円/月 → 年間実質収入約39万円 → 実質利回り約1.11%
  • 悲観シナリオ:月賃料4万円、空室率20%、管理費1.5万円/月 → 年間実質収入約22.2万円 → 実質利回り約0.63%

数字を見て「低すぎる」と感じた方もいるかもしれません。ここでは購入価格を円換算した分母が大きいため、円ベースの利回りがこの水準になっています。USD・ペソ建てで計算すると、楽観シナリオで表面利回りは6〜7%程度になりますが、その数字が「円で手元に残る利益」とは異なる点を明示しておく必要があります。

為替リスクの織り込み方:1ペソ=2.0円になった場合

フィリピンの賃料収入はペソまたはドルで受け取り、日本円に換算して日本の税務申告を行います。仮に1ペソ=2.5円が2.0円に円高になると、ペソ建ての収入は円換算で20%目減りします。

2020〜2024年の為替推移を見ると、ペソ円は1ペソ=2.1〜2.8円のレンジで動いており、変動幅は無視できない水準です。私は海外収入の受け取り時期をある程度分散させることで、為替の一時的な悪化によるダメージを和らげる工夫をしています。ただし為替リスクをゼロにする手法は存在せず、必ずリスク前提で計画を立てることが必要です。アブダビ不動産投資の実体験|宅建士が5つの判断軸で検証した2027年版

為替・税務に関しては個人の状況によって大きく異なるため、税理士や公認会計士への相談を強くお勧めします。

出口戦略と売却試算:買う前に売り方を決める

コンドミニアムの出口は「誰に売るか」で変わる

出口戦略を事前に組み込まないシミュレーションは未完成です。フィリピンのコンドミニアム売却には、主に3つの選択肢があります。①現地在住の外国人への売却、②フィリピン人富裕層への売却、③別の日本人投資家への転売です。

それぞれ買い手の属性・価格感・決済スピードが異なります。私が総合保険代理店に勤めていた時代に担当した富裕層のお客様の中にも、海外コンドミニアムを出口戦略なしで購入し、竣工後に売れずに困っている方が複数いました。需要の薄いエリアや築年数が経過した物件ほど、流動性は著しく低下します。

売却益と税金:日本での課税ルールを確認する

日本居住者がフィリピンの不動産を売却して得た利益は、日本の所得税・住民税の課税対象になります。短期譲渡(所有5年以下)の場合、税率は約39.63%、長期譲渡(5年超)でも約20.315%が課税されます。

さらにフィリピン現地でもキャピタルゲイン税(CGT:売却価格または評価額の高い方の6%)が課税されます。二重課税防止条約の適用可否は個々の状況によって異なるため、必ず税の専門家に確認が必要です。売却益が出た場合でも、税引き後の手取りで計算しないと、シミュレーションとして意味をなしません。売掛金 早期回収 方法7選|AFP宅建士が500人相談で導いた実例

私が試算で失敗した3点と7項目チェックリスト

実際に見落としていた3つのコスト

私自身の失敗として、以下の3点を試算に組み込んでいませんでした。同じ轍を踏まないためにも正直に書きます。

①管理会社への仲介費用:現地で賃借人を見つけてもらう際、月賃料の1ヶ月分程度を管理会社に支払います。年間ベースで約1ヶ月分のロスが発生します。

②送金コストと受取口座の維持費:海外送金の手数料は1回あたり2,000〜5,000円程度ですが、年12回積み上がると年間6万円近くになる場合があります。口座維持費も含めると、小さな数字に見えて無視できません。

③竣工後の内装仕上げコスト:プレセール物件はスケルトン引き渡しが多く、床材・照明・キッチン設備の設置費用が別途必要になります。私の物件では当初見積もりの1.4倍程度かかりました。これを購入価格に加算しないと、真の取得コストが見えません。

7項目チェックリストと不動産トラブル相談先

コンドミニアムのシミュレーションで確認すべき7項目をまとめます。この7点を事前に押さえているかどうかで、試算の精度は大きく変わります。

  • ①表面利回りではなく実質利回りで計算しているか(管理費・税・空室率を控除)
  • ②プレセール期間の無収益期間と機会コストを加算しているか
  • ③為替変動シナリオ(±20%)を試算に織り込んでいるか
  • ④出口戦略(誰に・いくらで売るか)を購入前に設定しているか
  • ⑤日本とフィリピン双方の税務コストを試算に含めているか
  • ⑥内装仕上げ・管理会社手数料・送金コストを取得費に計上しているか
  • ⑦楽観・標準・悲観の3シナリオで総収益を比較しているか

これらを自分一人で精査するのが難しい場合、または購入後にトラブルが発生した場合は、公正な立場から査定・相談を受け付けている機関を利用することも有効な選択肢です。個人の状況によって結果は大きく異なりますので、専門家への相談を必ず組み合わせてください。

海外不動産に関するトラブルや、適切な査定を求める方は以下からご相談いただけます。

【一般社団法人が提供する公平な不動産査定】トラブル解決協会

筆者:Christopher/AFP・宅地建物取引士。フィリピン・ハワイで実物不動産を所有し、現役の宅建士として国内外の不動産・資産形成を実務視点で解説。大手生命保険会社2年、総合保険代理店3年を経て、現在は都内法人を経営・インバウンド民泊事業を運営中。

【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。

【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆

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