海外不動産損益通算規制2020|宅建士が3物件保有で検証した5影響

2020年度の税制改正によって、海外不動産の損益通算規制は富裕層の節税戦略を根底から変えました。AFP・宅建士として保険代理店時代から富裕層の資産相談を担当してきた私・Christopherは、現在フィリピンのオルティガスエリアと、ハワイの主要リゾートにある物件を含む3物件を実際に保有しています。その当事者として、規制前後の変化を実務レベルで検証した結論をお伝えします。

2020年税制改正の概要と背景|なぜ海外不動産が狙い撃ちにされたのか

国外中古不動産の損益通算規制とは何か

2020年度税制改正(令和2年度)によって、国外中古不動産の減価償却費を使った損益通算が事実上封じられました。具体的には、国外中古建物から生じた不動産所得の損失のうち、減価償却費に相当する金額については、給与所得などの他の所得と損益通算できないという規制です。

改正前は、海外の中古物件の建物部分に対して日本の税法上の耐用年数(中古の場合は4年などの短縮耐用年数)を適用し、多額の減価償却費を計上することで不動産所得を赤字にし、その赤字を給与所得と通算して所得税・住民税を大幅に圧縮する手法が一般的でした。

この手法は合法ではありましたが、高額所得者が意図的に課税所得を圧縮するための「節税商品」として海外中古不動産が販売されており、税収の公平性の観点から問題視されていました。国税庁が繰り返し富裕層向け節税スキームを検討した結果、2020年の法改正に至ったという経緯があります。

改正の対象範囲と「国外中古建物」の定義

今回の規制における「国外中古建物」とは、国外にある建物で、日本の所得税法の規定による耐用年数の簡便法(見積法・簡便法)を使って減価償却を行っているものを指します。新築物件や、実際の使用可能年数を基にした見積耐用年数を用いた物件は、一部対象外となる場合もありますが、実務的には大多数の海外中古不動産が規制の対象に入ると考えてよいでしょう。

また、売却時の取扱いも重要です。規制によって損益通算に使えなかった減価償却費は「なかったもの」として扱われるのではなく、将来の譲渡所得の計算において取得費から控除される仕組みになっています。つまり、売却時には課税強化という形で影響が出てきます。この点を理解せずに出口戦略を描くと、思わぬ課税を受けることになります。専門家への相談を強く推奨します。

フィリピン・ハワイ3物件を保有する私が規制後に実感した5つの影響

影響①〜③:キャッシュフロー・節税効果・購入動機の変化

私がフィリピン・オルティガスのプレセールコンドミニアムを購入を決めたのは規制前でしたが、ハワイの主要リゾートにあるタイムシェアの活用戦略を見直したのは規制後です。実際に3物件を運用してみて、最初に気づいた影響は「毎年の実効税率が変わった」という点でした。

【影響①:キャッシュフロー計算の再設計が必要になった】
以前は「減価償却費による損失 × 税率」分だけ手元に税金が戻ってくる前提でキャッシュフローを設計していた投資家が多くいました。私自身、保険代理店時代に富裕層のお客様から「年間で数百万円の節税効果がある」という試算を持ち込まれることが何度もありました。2020年以降はその試算そのものが使えなくなるため、純粋な賃料収入から費用を引いた手残りで判断する必要があります。

【影響②:海外不動産の節税としての魅力が大幅に低下した】
規制前は「節税効果込みで利回り○%相当」という売り文句が通用していましたが、2020年以降はその計算式が成立しません。私の保有物件においても、減価償却を活用した節税メリットを期待して購入を検討していた層が明らかに減少したという現地エージェントからの情報がありました。

【影響③:購入動機が「節税目的」から「資産形成・分散投資目的」へシフトした】
富裕層の節税ニーズが海外不動産から離れ始め、その分だけ「本当にその国・エリアの成長を信じて買う」投資家が残りやすくなりました。これはある意味で市場の健全化とも言えます。私がフィリピンのプレセール物件を選んだ理由も節税だけではなく、フィリピンの人口動態と経済成長への期待でしたが、その視点の重要性が改めて証明された形です。

影響④〜⑤:売却戦略の変化と融資環境への波及効果

【影響④:売却時の課税強化という見えにくいリスクが顕在化した】
前述のとおり、損益通算に使えなかった減価償却費は売却時の取得費から差し引かれます。つまり、帳簿上の取得費が減少し、売却益が大きくなるという仕組みです。規制前に節税目的で購入した物件を2020年以降に売却する場合、この点で税務上の損失を被る可能性があります。私は宅建士として、出口戦略を描く際には必ず税理士と連携することを徹底しています。国によって税務ルールが大きく異なるため、日本側・現地側の双方の専門家に相談することが必要です。

【影響⑤:海外不動産融資への銀行姿勢が慎重化した】
節税メリットが消えたことで、海外不動産ローンに対する金融機関の評価基準も変わりました。かつては「減価償却を活用した節税効果込みの収支」を前提に融資審査をしていたケースがありましたが、現在は純粋な賃料収入ベースの収益性で判断されます。私自身がフィリピン物件の資金調達で感じたことですが、海外送金や外貨建てローンには為替リスクが必ず伴います。その点も含めて、収益性の試算は保守的に行うことが肝要です。個人差がある話ではありますが、リスク許容度に応じた判断が求められます。

規制後も有効な代替節税戦略|海外不動産で残された選択肢

新築・プレセール物件への移行と長期保有戦略

規制の対象が「国外中古建物」である以上、新築または新築に準じる物件は影響を受けにくいと考えられます。私がフィリピン・オルティガスエリアでプレセールのコンドミニアムを選んだ背景にも、将来的な減価償却の取扱いを意識した面がありました。プレセール物件は竣工後から減価償却が始まるため、長期的な節税効果と資産価値の両方を視野に入れた戦略が描きやすいです。

もっとも、プレセール特有のリスク——デベロッパーの施工遅延・倒産リスク、為替変動、現地法律の変更——も無視できません。フィリピンは外国人の土地所有が原則禁止であり、コンドミニアムのユニット所有という形での購入になります。日本の宅建業法とは全く異なる法体系の下で取引が進むため、現地弁護士の関与は省略すべきでないと私は考えます。売掛金 早期回収 方法7選|AFP宅建士が500人相談で導いた実例

法人活用・REITによる代替戦略

個人の損益通算規制の影響を回避する手段として、法人を通じた海外不動産投資や、米国REITへの投資という選択肢も検討する価値があります。私自身、現在は都内で法人を経営しており、法人格を活用した資産管理の仕組みを持っています。法人の場合は税務処理が個人と異なり、損失の扱い方や経費計上の範囲が広がる場面もあります。ただし、法人設立・維持コストや、実質的な管理負担も増えるため、収益規模によっては費用対効果が合わないケースもあります。

一方、米国REITはドル建て資産として分散投資の観点から有効性が高く、私も現在ポートフォリオに組み入れています。不動産実物投資と異なり、流動性が高く、少額から始めやすい点が特長です。ただし、為替リスクは必ず伴います。円高局面では分配金が目減りしますし、為替差損が生じる可能性もあります。「為替リスクがない」投資など存在しないと私は断言します。

宅建士として考える今後の出口戦略|売却・保有・転換の判断軸

保有継続か売却かの判断基準

規制後に海外不動産を保有し続けるかどうかは、「節税効果抜きでもキャッシュフローがプラスになるか」という一点で判断するのが私の基本スタンスです。インバウンド民泊事業を運営している立場からも、空室リスクや運営コストの見積もりを甘くすることは絶対に避けるべきだと実感しています。

売却を検討する場合は、現地の不動産市況・為替レート・日本での課税(特に取得費調整後の譲渡所得税)を総合的に判断する必要があります。私のフィリピン物件はプレセール段階から価格上昇傾向が続いていますが、竣工後の実際の管理・賃貸状況を確認してから出口タイミングを判断する方針です。市場の上昇傾向が今後も続くという保証はなく、現地の政治リスクや規制変更にも常に注意が必要です。

タイムシェアという「準不動産」の出口戦略

ハワイのマリオット系タイムシェアは、一般的な不動産投資とは性格が異なります。タイムシェアは転売市場が限定的で、流動性は通常の不動産より低い点を理解した上で保有することが前提です。私の場合は資産形成というより「将来のアジア圏移住を計画する中でのリゾート利用権」として位置づけており、節税目的での保有ではありません。海外移住オーストラリア不動産賃貸比較|宅建士が検証した5判断軸

タイムシェアの出口戦略としては、①利用権の第三者への譲渡、②ポイント交換プログラムの活用、③デベロッパーへの買取依頼、といった方法が考えられますが、いずれも流動性は限定的です。この点を事前に理解せずに「節税になるリゾート投資」として購入することは、損失につながる可能性があります。海外不動産・タイムシェアに関しては、現地と日本の双方の法律・税務専門家への相談を欠かさないことを強く推奨します。

まとめ:2020年規制後に海外不動産と向き合うための結論

規制後の海外不動産投資で押さえるべき5つのポイント

  • ①国外中古建物の減価償却を使った損益通算は2020年度改正で封じられた。節税目的での購入は戦略の再構築が必要。
  • ②売却時に取得費が減少する仕組みを理解し、出口戦略は事前に税理士と設計すること。国によって税務ルールが異なるため、現地専門家との連携も必須。
  • ③新築・プレセール物件は規制の影響を受けにくい面があるが、デベロッパーリスク・為替リスク・現地法律リスクは必ず伴う。リスクゼロの投資は存在しない。
  • ④法人活用・米国REITは代替戦略として検討する価値があるが、コスト・為替リスク・流動性を含めて個人の状況に応じて判断すること。個人差があります。
  • ⑤「節税効果抜きでキャッシュフローがプラスになるか」を判断軸にすることで、規制後も実質的な資産形成につながる海外不動産投資が成立する。

不動産トラブルや査定に悩む前に、公平な第三者機関を活用する

海外不動産規制の影響を受け、保有物件の売却を検討しているケースや、購入・保有に関するトラブルを抱えているケースが増えています。私自身、宅建士として国内の不動産取引における情報の非対称性を痛感してきましたが、海外物件においてはその非対称性がさらに大きくなります。

日本の宅建業法は国内不動産に適用されるものであり、海外不動産は法的保護の枠組みが根本的に異なります。だからこそ、公平な立場で情報提供・査定を行える機関の存在が重要です。不動産に関するトラブルや売却査定で悩んでいる方は、一般社団法人が運営する中立的な窓口を活用することを検討してみてください。

【一般社団法人が提供する公平な不動産査定】トラブル解決協会

筆者:Christopher/AFP(日本FP協会認定)・宅地建物取引士。フィリピン・オルティガスエリアのプレセールコンドミニアムおよびハワイの主要リゾートのタイムシェアを含む複数の海外不動産を実際に保有。株式・ETF・米国REIT・暗号資産・銀地金を運用中。大手生命保険会社2年、総合保険代理店3年を経て、個人事業主・富裕層の資産相談を多数担当。現在は東京都内で法人を経営し、インバウンド民泊事業を運営。将来的なアジア圏への海外移住を計画しながら、現役の宅建士・AFPとして海外資産形成と日本の税務・法務の両面を実務視点で解説している。

【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。

【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆

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